「夏秋制覇」に挑む! 第53回明治神宮野球大会が18日に開幕する。夏の甲子園で東北勢初の優勝を飾り、秋季東北大会を制した仙台育英(宮城)が3年ぶり8度目の出場を果たした。日刊スポーツ東北版では今日17日から「獅子の投手王国」と題し、3日連続で同大会に臨む5投手を紹介する。第1回は、夏の甲子園V右腕のエース高橋煌稀(こうき、2年)と最速147キロ左腕、仁田陽翔(はると、2年)。同校のシンボルマーク「ライオン」のごとく、各地区から集う全国の強打者に牙をむく。

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仙台育英の絶対的エース高橋は、自身初となる神宮のマウンドに向け、手応えを口にした。「調子のピークを神宮(大会)に、持ってこれると思います」。今秋の東北大会後は約1週間、ノースロー調整で疲労回復を最優先。現在は、ウエートトレーニング中心のメニューで「レッドコード」の器具やメディシンボールで汗を流し、自らのペースで状態を完全に仕上げつつある。

冷静なマウンドさばきに加え、ピンチの場面でも動じない強さ。夏の甲子園を経験し、高橋はひと回りスケールアップした。「自分に自信がついてきた。夏の甲子園を経験したこともあって、どんな場面でも焦らずに冷静に投げることができている」と、甲子園V右腕は成長を実感する。東北大会では3試合にリリーフ登板し、14回を投げ無失点。新チームから背負う背番号「1」にふさわしいエースの貫禄を見せつけた。

「(仙台)育英のエースになる」。強い決意を胸に、強豪校の門をたたいた。だが、簡単にはいかない。「強い球を投げることだけ意識していたが、球が速いだけでは簡単に打たれた」。入学当初から真っすぐは140キロ超えも、全く通用せず、1年間はベンチ入りすら果たせなかった。

転機が訪れたのは1年冬だった。YouTubeで巨人などでプレーした桑田真澄投手の動画を見てから、きっかけをつかんだ。「グローブで投げる位置を決めていた。でも、動画を見て肩甲骨の裏を見る感じに変えたら、投げたいコースに投げられるようになった」と言う。課題の投球のばらつきが改善。内外角に投げ分ける制球が安定したことによって、持ち味の最速146キロ直球が生きてきた。2年春に公式戦デビューを飾り、着々と結果もついてきた。「制球が身についてきた」と胸を張った。

19日に九州、沖縄地区王者の沖縄尚学と対戦する。「夏秋連覇」への初陣となるが意識はない。「夏秋連覇は簡単ではない。目の前の一戦に集中して勝ち抜いていきたい。エースを任されているからこそ、信頼ある投球をしていく」と言葉に力を込めた。全国の強打者に真っ向勝負を挑み、秋の「チャンピオンロード」を駆け上がっていく。【佐藤究】

■仁田陽翔は静かに闘志

神宮の大舞台で快速球を見せつける。最速147キロ左腕、仁田は静かに闘志を燃やしている。「相手打者のレベルも高いと思う。持ち味の力強いストレートで勝負していきたい」と真っ向勝負を挑む。

もう大崩れはしない。球速はチーム最速。だが、安定感が課題だった。昨秋を「0か100の投球内容だった」と振り返る。良い時は手がつけられない。その一方、悪い時は四球からリズムを崩して自滅と、調子の波が激しかった。ネットスローでフォームの再現性を高め、「少しずつまとまってきている」と手応えを口にした。

夏の甲子園では2試合に登板。左投手では大会最速の147キロを計測するなど、ポテンシャルの高さを示した。「甲子園と同じように、神宮も特別な場所だと思っている。狙うは優勝です」と決意をにじませた。