2023年(令5)、北海道の高校野球は新たな歴史を刻む。夏の南北北海道大会準決勝と決勝が日本ハムの新球場エスコンフィールド北海道、秋季全道大会は札幌ドームが会場となる。グラウンドが土から芝生になるなど環境も大きく変わる。各チームどのような準備をして試合に挑むのか。各校の指導者に聞いた。【取材・構成=山崎純一】

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今夏からの開催球場変更について、道内の高校指導者は前向きに受け止める。昨秋の全道大会で2連覇し、今春センバツ出場が有力なクラーク佐々木啓司監督(66)は「近代的な施設を使っていくのはいいことだと思う。他の地域では人工芝でやっているところもある。楽しみな年になりそう」と期待する。

全道大会などでの主要球場、札幌円山は内野全面が土であるのに対して、エスコンフィールド北海道は天然芝(一部土)、札幌ドームは人工芝。東海大札幌の大脇英徳監督(47)は「札幌ドームの人工芝は硬いので(ボールが)高く弾んだりすると思う。攻撃の仕方も今までと全然変わってくるかもしれない。野球が変わる」と口にする。

札幌ドームのベース周辺はレンガなどの土を粉砕、ブレンドしてつくられる人工土(通称アンツーカー)を使用。マウンドの土も同様で硬いとされる。東海大札幌や札幌日大ではブルペンを従来よりも硬めに整備し、練習を積む予定だ。

守備の変化を指摘する声もある。2度の全国優勝実績を持つ駒大苫小牧では昨年11月から、内野手が崩れた体勢で捕球後、送球するまでのプレーを以前より重視している。佐々木孝介監督(36)は「投手のフィールディングにしても、野手のゲッツーにしても(これまでと)変わってくるという話をしながら」と指導する。クラーク佐々木監督は「キャッチボールの正確さは高いレベルで意識をしないといけない」と基本の大切さを説く。

札幌ドームでの実戦に、昨秋全道準優勝北海の平川敦監督(51)は、攻撃面で1つポイントを挙げる。人工芝は走りやすいともいわれ「スピードが上がる可能性があるので、土の上でやるより走力が上がるかもしれない。足が速い選手がいて機動力のあるチームは強いのでは」と読む。春夏10度甲子園出場の北照など、人工芝の上で練習を積んでいるチームもある。

札幌円山の両翼98メートル、中堅117メートルに比べ、札幌ドームは同100メートル、122メートル。エスコンフィールドの外野は左右非対称となる。クラーク佐々木監督は「風の影響を受けない中での左翼線、右翼線の守り方。バウンドもしっかり頭に入れて、広さがあるだけカバリングをしっかり。広さ対策では連係プレーを正確にできることが必要」と話す。

天候不順や日没などによる中止、順延の不安は解消される。秋季全道大会は例年より約2週間遅く開催されることが決まっており、指導者の一部からは「チームづくりには時間が取れる」との声も挙がる。新たなドラマが見られるかもしれない。

◆高校野球地方大会の主なドーム開催 05~07年夏の愛知大会でナゴヤドーム(現バンテリンドームナゴヤ)、07~09年、12年夏の福岡大会で福岡ドーム(現福岡PayPayドーム)が使用されている。夏の大阪大会では例年、北地区1回戦1試合と南地区1回戦1試合が大阪ドーム(現京セラドーム大阪)で行われる。21年には東西東京大会準決勝以降の試合が初めて東京ドームで開催された。

■目標になれば

北海道高野連の坂本浩哉会長(58)は、開催場変更について、道内高校野球の発展の一助になればと期待する。コロナ禍が続く中ではあるが、昨年から有観客開催が再開されるなど、高校野球熱が高まることを願う。「今まで(北の)聖地円山で球児がやってきたことも大切にしながら、伝統を残しつつ、エスコンフィールドや札幌ドームでやることも1つの目標になれば」と話した。