社の19年ぶりセンバツ勝利はならなかった。「完敗です。全員が、力のなさが身に染みたと思います」。昨夏甲子園16強校の地力に屈し、隈翼主将(3年)はくちびるをかみしめた。

昨秋近畿大会1回戦で奈良王者の天理に13-7と打ち勝った攻撃力などを評価され、近畿最後の7枠目に選ばれた。山本巧監督(50)はこの日も「選考していただけたのは感謝の気持ちしかなくて」と繰り返した。ただ、チーム作りという点では、道半ば。近畿大会準々決勝で智弁和歌山にコールド負けしたあと、社は夏の甲子園連続出場を目指してきた。個々の力を伸ばし、大舞台で発揮するには、時間が足りなかった。「今日がうまくいかないことも、覚悟していました」と監督は声を振り絞った。

その中で、持てる力はうかがわせた。2点を追った4回2死。中前打で出塁した尾崎寛介内野手(2年)が二盗に成功。捕手からのストライク送球にも、二塁ベース手前で急ブレーキをかけて遊撃手のタッチをかいくぐる“忍者盗塁”で得点圏へ。「とっさの判断だった。アウトになっていたら相手に流れがいっていたので、良かった」と尾崎。続く隈の中前打で、唯一の得点を挙げた。

04年センバツ。テレビ越しに見た衝撃を、山本監督は忘れない。母校・社が初めて甲子園に出場。後輩たちの奮戦を見ようと、テレビをつけた。瞬間、福井と1回戦を戦うユニホームが目に飛び込んできた。「なんともいえない気持ちでした。社高校が甲子園で試合をしている。その現実を見させていただいた瞬間は、感激しました」。19年前の衝撃は、甲子園を思う軸になった。14年4月に母校コーチ、同年8月に監督に就任し「試合と練習と生活はイコールで結ばれるもの」の信念のもと、「ブレーンストーミング」など脳を使い、思考と対話を徹底し、チームを育ててきた。

「いい意味で、選手たちも自分たちも非常に悔しい。甲子園で悔しさを感じられるようなところまで来たのは、選手たちの頑張り。夏に必ず勝ちきれるチームになって、兵庫大会に入っていきたい」と山本監督。「絶対に夏に戻ってくるという気持ちです」と隈主将。監督と選手の思いは重なる。この敗戦から、夏に向かう。【堀まどか】

◆無失策試合 海星-社戦で記録。今大会初。