今大会出場選手中、最速の151キロ右腕・専大松戸(千葉)の平野大地投手(3年)が、緩急をつけた巧みな投球で自身初完封で、センバツ初勝利に導いた。

「なんとしても自分で抑えたい」。強い気持ちが、平野を振るい立たせた。9回には両足がつるアクシデントも、水分補給でひと息つくと2死二塁から139キロの力のある真っすぐで三ゴロ。マウンド上で大きくガッツポーズを見せた。「1回、1回、0点で抑える気持ちで。最後は気持ちで投げきりました」。

初めての甲子園の舞台で、進化を見せた。「勝つことが優先。スピードより、指にかかった強い球を意識した」。前半は冬に磨いたフォークに、100キロに満たないカーブなど、多彩な変化球を軸に組み立て、後半に入り「変化球が当てられている」と見るや、真っすぐ中心に切り替えて的を絞らせず。「今日は真っすぐが指にかかって走っていた。自信をもって投げられました」。7安打されながらも、要所でギアを入れ、奪った三振は6。この日の最速は146キロだった。

大好きな投手で夢の舞台に立った。取手シニアでは2番手捕手。「試合ほとんど出場できない。野球がつまらなかった」。専大松戸に入学すると、社会人野球で野手としてプレーした父・勝広さん(44)の勧めで、持丸修一監督(74)に「投手をやらせてください」と直訴。1年夏、投手に転向した。

自分で選んだ道に迷いはない。冬は走り込みに、股関節と肩甲骨周りの柔軟に力を入れた。ゆったりとしたフォームから、リリースの瞬間に力を入れる。「秋までは目いっぱい腕を振って速球を投げようとしていた。今は回転数のいい球を投げられている」と潜在能力の高さを見せつけた。

甲子園のマウンドを思う存分、楽しんでいる。「応援も入って、すごく楽しかった。早く終わってしまった感じ」。投げる楽しさを追い求め、平野は甲子園で輝き続ける。【保坂淑子】

▽西武潮崎編成グループディレクター 総合力の高いピッチャー。これからも追いかけていく選手。

▽ヤクルト・橿渕編成部スカウトグループデスク 球も速いし、カーブ、スライダーもうまく投げる。緩急の使い方がいい。潜在能力抜群の選手だと思います。

▽DeNA八馬アマスカウトグループリーダー いいときよりは馬力が物足りなかった。でも器用さもあるし柔らかい。素材はいいと思う。

▽日本ハム・大渕スカウト部長兼GM補佐 秋よりも間違いなくよくなっている。変化球とのコンビネーションがいい。