埼玉では上尾の高野監督がどんなチームを作っているのか、機会があれば見たいと考えていました。強烈な日差しを浴びながら、上尾、武蔵越生ともにシートノックからはつらつとした動きでした。

中でも上尾は7分間の短い時間の中、誰一人として遊んでいる選手はいません。声をかけあい、ベースカバーへの動きを怠らず全体が連動しています。足がよく動いている。毎日、いい練習をしてきたのだろうと、思わせてくれました。

この試合では、投手交代の機微、難しさをあらためて感じました。1-1の2回表、武蔵越生の攻撃は2死一、三塁。上尾は先発の左腕飯島君から、2番手の右腕藤村君に交代しました。

素早い判断です。監督とすれば大きな決断です。スタンドから見ていた私の印象では、飯島君はストライクとボールがはっきりしていました。

初回は先頭に四球。犠打で得点圏に送られて先制を許しています。2回も1死から死球と犠打で得点圏に走者を背負いました。交代か、もう少し様子を見るか、難しい局面です。

私も同様の状況で何度も悩んできました。次は左打者、あと1人投げさせてから交代か。いや、仮に打たれてしまっては2番手の負担が増える。さらに走者を抱える可能性もあります。

私はこういう時、「しっくり行かない時は早めに交代」という考えで決断していました。当然、それが裏目に出ることもあります。しかし、熟考している時間はありません。日々の練習を通して投手の調子を見極めるのも監督の役目です。

先発が本番で本来の力を発揮できない時もよくあることです。そこで腹をくくって決断するしかない、という思いでやってきました。

この試合、上尾の継投は成功します。3回から3イニング連続で3者凡退。1点リードの3回裏には、1死一、三塁でその藤村君が左翼へ2点タイムリー。この投打の活躍で、上尾は継投を機に勝利をグッと引き寄せました。

ここから地方大会はますます厳しい戦いに入ります。投手のコンディション維持が難しくなり、試合での見極め、継投のタイミングが勝敗を分けます。

この試合での早めの継投が勝利につながったことは、佳境に入る夏の戦いにとり、チームがまとまるきっかけになると感じました。(日刊スポーツ評論家)