慶応の打線は強力でした。1回表から東海大相模(以下相模)の外野が、見たことがないくらいに深く守っていました。それだけ脅威だったのでしょう。

初回は延末君の打球が右翼スタンドへ飛び込み、この一撃が相模バッテリーに与えた衝撃が大きかったように思えました。スタンドから見ていると、慶応はどのバッターも、体勢を崩されず、どっしり構えているのが良く分かります。

スナップを柔らかく、右打者なら左肩がマウンド方向に流れず、間を取ってからスイングに入っています。3本のアーチは、どれも素晴らしい当たりでした。

この打力なら、どんなピッチャーと対戦しても、自分たちのスイングに集中すれば、そうそう簡単にはやられないでしょう。今夏見たチームでは群を抜いています。

強力打線が組めた時、私は先頭打者の出塁率に注目していました。選球眼が良く俊足であること。慶応は丸田君が4打席で3安打1四球。打線に突破口を与えていました。

また、2番八木君は追加点がほしい3回無死一塁で、初球を三塁線へセーフティーバント。三塁手が冷静に見てファウルとしましたが、相模内野陣に神経を使わせるワンプレーです。カウント1-1から、今度はエンドラン(結果はファウル)。どんどん、畳みかけました。

結果は空振り三振も、こうした先手、先手を仕掛ける2番打者は大きいと感じます。何をしてくるかわからない警戒心を相手に与えて優位に立つ。そして中軸はより自分のバッティングに専念できます。

相模は悔しい負けになりました。先発の子安君のボールも力はありましたが、初回の3ランで完全に後手に回った感じを受けました。それでも私の印象としては、スイングに迫力もあり、こんな大差がついたのは驚きでした。

原監督は門馬前監督の後を継ぎ、結果を出そうと腐心しています。私は後任を三木監督に託しましたが、託された監督にしか分からない重圧と向き合う日々だと察します。

力を発揮する前に、3ラン、2ランで突き放された相模選手の無念さを思うと、力の差以上のものが出てしまう夏の準決勝の難しさをかみしめます。

決勝は慶応打線と横浜のエース左腕杉山君という組み合わせかなと予想しています。春に練習試合で対戦した杉山君のボールには力がありました。ぶつかり合う激しいゲームになりそうです。(日刊スポーツ評論家)