<高校野球西東京大会:日大三14-4明大中野八王子>◇27日◇準決勝◇神宮

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

   ◇   ◇   ◇

数センチ、届かなかった。いやグラブには触れたようにも感じる。明大中野八王子・西川幸史朗外野手(3年)は「1年生が頑張って投げていたので、何としても流れを止めたいなと思って飛び込んだんですけど、届かなかったです」と潔く振り返った。

初回に自らの右前打もあり、4点を先制。だが、日大三打線は甘くなかった。先発の1年生右腕、上原が4回に追い付かれ、さらに勝ち越しの2ランを打たれた。その直後、3番打者の打球が飛んできた。「絶対、捕る」。右翼の西川は右翼線方向へ猛ダッシュし、最後は飛び込んだ。が、届かない。勢い余り、ファウルゾーンのフェンスに顔面をぶつけた。腰も少しひねった。「くらくらして」しばらく立ち上がれなかった。ランニングホームランになってしまった。

ベンチ裏まで担架で運ばれた。心配されたが、大丈夫との判断が下る。約8分後。頭を下げてグラウンドへ。「相手チームにも(中断で)迷惑をかけてしまったので、ちゃんと一礼しました」。拍手に包まれた。

5回以降も日大三打線は止まらず、結局、6回コールド負けを喫した。「(去年の)秋、日大三に大敗してから、やっとリベンジできると思ったんですけど。後半ずるずるいっちゃって。ベンチは諦めてなかったんですけど、しょうがないです」と、ハキハキした口調は変わらなかった。自身も、チームも、モットーは「全力プレー」。だから、あのフライも全力で捕りに行ったし、「全然、悔いは残ってないです。やり切りましたね」と言えた。

明大に進み、野球を続けるつもりだ。同じユニホームを着て、神宮に帰ってくるのが新たな目標となる。また、同じ打球が飛んできたら?

「飛び込みます。次は、絶対、捕れると思います」

【古川真弥】