日大山形が、おかやま山陽(岡山)に2-9で敗れ、初戦敗退。初回に先制、2回にも1点を追加し2-0とリードしたが、最速147キロ右腕のエース菅井颯投手(3年)が4回、自らの失策をきっかけに逆転を許すなど、6回途中8失点(自責点5)で降板。打線も菅井の失点を取り返せなかった。

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高1の夏、応援スタンドから眺め、憧れたマウンドを、高く振り上げた左足で思いきり踏みしめた。初回、この日最速の142キロをマーク。2、3回は満塁のピンチを招いたが、無失点に抑えた。しかし、4回無死一、二塁で投ゴロを三塁に悪送球。自らのミスで2-2の同点に追いつかれ、逆転を許すと、6回には5得点を喫した。菅井は「初戦を勝って、もっと投げたかった。初戦だけで終わってしまい、悔しいしかないです」。夢のマウンドは悔いの残る結果に終わった。

菅井は小学6年生の17年夏、自由研究の題材に同年の甲子園を取り上げた。大会全試合のスコアや試合の見どころ、注目選手をまとめていた。母・鮎子さん(44)は「その時から甲子園に憧れていたのかな…」と振り返る。同年の山形代表は日大山形。中学3年生で同校の練習を見学し、入学を決意。日大山形で甲子園に出場するのは運命だった。鮎子さんは「一昨年、応援で来たときに、『あそこで投げられるといいね』と話はしていたので…。夢がかなってよかったなと見ています」と目を細めた。

菅井の夢はまだ終わらない。ナインは泣いていたが「自分が終わらせてしまったので、自分は泣いちゃいけない」と、菅井の目に涙はなく、前だけを見据えていた。「次は自分が投げてチームメートの夢をかなえられるように頑張りたい」。進路は大学進学を予定。将来の夢は警察官だったが、「今日の負けで『野球で生きていきたい』という気持ちが大きくなった」と、4年後のプロ志望を視野に入れた。この敗戦を糧に、新たな夢を追いかける。【濱本神威】

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