「慶応のプリンス」が新たな歴史を切り開く。第105回全国高校野球選手権記念大会は今日23日、甲子園で決勝戦が行われる。103年ぶりに決勝進出を果たし、1916年(大5)以来107年ぶりの優勝を狙う慶応(神奈川)は、史上7校目の夏2連覇を狙う、仙台育英(宮城)と対戦する。センバツ初戦、夏の県大会前にも対戦した「運命のリマッチ」。キーマンとなるのはリードオフマンとして今大会出塁率5割超えを誇る丸田湊斗外野手(3年)。人気実力共に兼ね備えたスター1番打者が日本一へけん引する。

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丸田の中学時代の恩師である横浜泉中央ボーイズの監督、宇野和之監督(68)が当時から変わらぬ賢いプリンスぶりを明かした。

中3年時に出場したベイスターズ杯で、鋭い洞察力に衝撃を受けたという。「コールド負けもあるかな」とよぎった6点ビハインドの3回。丸田が出塁した。だがその日に限って、すぐにスタートを切らない。相手バッテリーが盗塁を警戒してボールを重ねる。ボール先行してストライクを欲しがった球を味方打者が快打して生還した。

ベンチに戻ってきた丸田に理由を聞くと「相手のベンチが捕手に『外せ』のサインを出していたので」。サインを見破っていた。丸田の気づきを起点にチーム全員がやり始めると6点差から11-6で逆転勝利。相手チームには今夏の神奈川県大会決勝で対戦し、U18でも同僚となる横浜の緒方漣内野手(3年)がいた。

不思議なこともあった。当時は遊撃を守り、中前へ抜ける打球へ飛び込んでも美白な顔は絶対に汚れなかったという。「ヘッドスライディングをしてもなぜか汚れない、不思議でしたね。泥だらけの姿は1度も見たことがない」。クールな印象が残っていた。だからこそ沖縄尚学戦で見せたチームを鼓舞する姿に「初めて見ました、こんなことやるんだ」と熱い一面を垣間見た。【佐瀬百合子】

 

◆丸田湊斗(まるた・みなと)2005年(平17)4月25日生まれ、神奈川県出身。南舞岡スカイラークスで小3から野球を始め、横浜泉中央ボーイズでは遊撃手として中2、3年時に全国大会出場。慶応では2年秋からレギュラー。好きな言葉は「ありがとう」。趣味は音楽鑑賞で「Official髭男dism」が好き。遠投90メートル、50メートル走5秒9。174センチ、73キロ。右投げ左打ち。