22年、東北勢悲願の初優勝を果たし、深紅の大優勝旗の白河の関越えを実現した仙台育英(宮城)。今年は史上7校目の夏連覇に挑んだが惜しくも準優勝。だが、浦和学院(埼玉)、聖光学院(福島)、履正社(大阪)、花巻東(岩手)、神村学園(鹿児島)といった強豪校を次々に破った強さは昨年以上を感じさせた。日刊スポーツ東北版では「22年V、23年準V 仙台育英 強さの秘密」と題し、仙台育英の進化に迫る連載をスタート(不定期)。第1回は、春のセンバツでは3試合28安打のうち、長打1本の打線が、今大会は6試合66安打のうち長打が22本と大幅に“進化”。なぜ、このような変貌を遂げたのか、その裏には量と質の両方にこだわった打撃練習があった。

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長打が22本。そのうち本塁打は今大会最多かつ宮城県勢過去最多の5本をマークするなど強力な打線で、準優勝をつかんだ。この強力打線は、春の東北大会後から夏の県大会前にかけて、打撃強化に注力したたまものだ。

打撃練習の種類は問わずに「7秒に1球打つ」を3分半1セットで行った。セット間には1分ほどの休息。30分経ったら5分ほど休憩。休憩後も同様にバットを振り、計約1時間のメニューを週6~7で約1カ月続けた。須江航監督(40)は「スキルを獲得するためには、今の時代ではあまり聞かなくなった根性とか忍耐力というのがないといけない」。精度を求め、ひたすら数をこなした。

もちろん、その質にもこだわった。選手は打撃ケージに入る前に、対戦する投手の映像をiPadでチェックし、投球のイメージを膨らませてから打撃練習。打ち込みを終えると撮影した自身の打撃フォームを何度も確認した。相手投手の投球のイメージをつかみ、どう打つべきかを予習しているので試合でも動じない。「自分のやるべきことが整理されているので、打席の中で自分と戦っている子がほとんどいない」と指揮官。データと練習に裏打ちされた“自信”が好結果に結びついた。

初戦の浦和学院戦では19安打19得点。6人が長打を放つ大爆発で幕を開けた甲子園は、決勝まで決して打ち負けることなく突き進んだ。根底にあったのは圧倒的な“量”とこだわり抜いた“質”。18年ぶり、史上7校目の夏連覇こそならなかったが、仙台育英の力強い戦いぶりは、宮城、東北の地に再び希望を与えた。【濱本神威】