<高校野球和歌山大会:智弁和歌山7-0田辺>◇27日◇準決勝◇和歌山市紀三井寺
山本陣世には幼い頃から背中を追い続けてきた兄がいる。3学年年上の隆世さん(20)だ。野球を始めたのも「お兄ちゃんがやっていたから」。兄は21年にノースアジア大明桜(秋田)の投手として夏の甲子園にも出場した。「アドバイスもしてくれたり、勇気づけられる言葉も言ってくれる。ありがたい存在です」。この日は家を出る前に「お前やったらいけるから。思い切っていけ!」とエールを送られた。
家族思いの兄だった。関西の強豪大学で野球部に所属していたが「大学で野球を続けたい」という弟の思いを知り、大学3年になる前の今年の1月に野球を辞めることを決断した。母みのりさん(50)に「野球はお金がかかるし、陣世にやらしたって。大学は卒業するけど、自分でアルバイトもするし」と伝えたという。弟は「感謝してます」と感慨深げに話した。
今春のセンバツには21世紀枠で出場も、兄と同じ夏聖地に立つことはできなかった。抜群の打撃センスと昨秋から本格的に練習を始めた投手で最速144キロを計測するなど、高い身体能力を発揮して全国に名をとどろかせた山本陣の将来の夢は「プロ野球選手」だ。「子どもたちに夢を与えられるような選手になりたいです」。兄から受けたバトンを胸に秘め、新たな道へ歩み出す。【古財稜明】

