「珍予習」で初戦突破だ。日本ハム新庄監督の母校、西日本短大付(福岡)が金足農(秋田)の猛反撃をしのぎ、14年ぶりの聖地1勝を手にした。先発したエース村上太一投手(3年)が9回4失点(自責2)で完投勝ち。6-0の最終回は相手を応援する“判官びいき”にも押されて4失点したが、前夜に「カナノウ旋風」を映像で予習しており動揺はなかった。逆転を許さず、140球の力投で勝利をつかんだ。

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土壇場で苦しんだ分だけ、西日本短大付のエース村上が破顔した。右こぶしを2度も突き上げ、勝者の列へ駆け出した。

「やっぱり苦しかった。勝ててホッとした気持ち」

6-0の9回表。最後の試練が訪れた。3連打で1点を失うと、甲子園の雰囲気が一変した。金足農を応援する“判官びいき”が生まれ、巨人のチャンステーマ「Gフレア」に聖地全体が手拍子。銀傘にも反響し、完全なアウェー状態で失策も重なった。完勝ムードから2点差まで迫られた。それでも2死一、二塁から最後は二飛に打ち取った。

「金足農業さんの応援は分かっていた。のまれないように投げました」

用意周到だった。前夜、金足農が全国準優勝した18年夏の映像を視聴していた。「Gフレア」はカナノウ旋風時も鉄板応援歌だった。相手エースは当時の甲子園で主役だったオリックス吉田輝星の弟大輝。場内がカナノウムードに包まれることは容易に想像できた。イメージを膨らませておく必要があり「みんな聞いていた。動揺とかはなかった」。「珍予習」の成果を発揮し、140球の力投で“魔曲”をはねのけた。

学校では新庄監督ばりのスターだ。端正な顔立ちで185センチとスタイル抜群。新庄監督と高校時代の同級生だった西村慎太郎監督(52)も「そりゃあモテますよ」と言う。今大会前に学校で行われた壮行式では「太一く~ん」と一般生徒から黄色い声が飛び交った。優しい性格で好きな言葉は「笑顔」。マウンドで厳しい表情は一切見せない。「エースが苦しい顔を見せたら負け。『必笑』を意識しています」とさわやかに笑った。

3年ぶりの甲子園出場で14年ぶりの甲子園1勝。勝ち進めば、学校に日本ハムの選手たちの木製バットを届けてくれた新庄監督が現地応援できる可能性も出てくる。西村監督は「新庄が来たら新庄のエネルギーを全部吸い取ってやろうと思います」と宣言した。【佐藤究】

◆村上太一(むらかみ・たいち)2006年(平18)4月23日、福岡・柳川市出身。小学1年で野球を始め、三橋中ではポニーリーグの筑後リバーズに所属。西日本短大付では1年春からベンチ入り。好きな言葉は「笑顔」。50メートル走5秒9、遠投95メートル。185センチ、85キロ。右投げ右打ち。

○…NPB現役監督の母校が勝利 日本ハム新庄監督の母校、西日本短大付が勝利。最近のケースでは21年春の東海大相模(巨人原監督)、22年春の国学院久我山(ロッテ井口監督)、同年夏の天理(ソフトバンク藤本監督)がある。

金足農は最終回の猛追及ばず初戦敗退 新潟産大付、菰野が初勝利/詳細