<高校野球埼玉大会:児玉6-4浦和東>◇12日◇2回戦

 福島第1原発から約3・5キロの双葉(福島)から転入した浦和東の猪狩優樹捕手(2年)の母ひとみさん(51)は複雑な思いで観戦していた。

 小4から野球を始めた猪狩は、中学時代には地元浜通りの選抜チームにも選ばれた。自らの強い意志で、過去甲子園に3度出場の双葉に進学。毎日朝早くから夜遅くまで練習に励む息子をみて、ひとみさんも甲子園は夢じゃないと思っていた。しかし母子の願いは3月11日に奪われた。

 地震から転入した4月19日まで1カ月以上、体を動かせずもんもんとする息子の姿を見て悩んだ。家計のことを考え「おれ、野球続けられるかな」と弱音を吐く息子に、「続けなさい」ときっぱり言った。「もしあのまま震災がなければと思うと悔しい。でも今は、楽しく仲間と野球ができればそれが優樹のためになると180度考えが変わりました」と笑う。

 試合は4点差の9回に、2点を追い上げるが惜しくも初戦で敗退した。猪狩は2日前、双葉から湯本(福島)に転入した親友の池田健太郎(2年)から電話で「がんばれ」と激励された。目を赤くしながら「福島のみんなには甲子園に行ってもらいたい」。猪狩の埼玉での夏が終わった。【島根純】