<高校野球福島大会:いわき海星6-5福島南>◇17日◇2回戦

 いわき海星が福島南にサヨナラ勝ちし、4年ぶりの勝利をつかんだ。震災で校舎、グラウンドが津波被害を受けたが、限られた環境の中で夏に備え、9回に試合をひっくり返した。

 優勝したかのような騒ぎだった。9回に5-5と追いつき、なおも1死満塁。三塁走者の佐川由紀(2年)が中犠飛で生還すると、いわき海星ナインは跳び上がりながら本塁に駆け寄った。若林亨監督(44)は「優勝したような気持ち。感動した」と頼もしそうに見つめていた。

 太平洋沿いの同校は、震災による津波にのみこまれた。浜辺の砂が、グラウンドに流れ込んで約30センチも堆積。柏浦健太主将(3年)は「包丁、ガラス、防波堤の破片。いろんなものが転がっていた。もう終わったと思った」と変わり果てた光景にがくぜんとした。

 それでも、夏への希望は失わなかった。校舎のがれき撤去が終わると、廊下で100メートルダッシュを繰り返した。佐川は言う。「グラウンドがボコボコで走れない。1日50本。足はなまってない」。中犠飛は浅かったが、同じような打球だった前打者の中飛を、冷静に見ていた。「あの肩なら…あれだけ走ったんだから」。限られた環境で鍛えた脚力、震災前の半分になった練習時間で養った集中力が、勝負どころで結実した。

 今でも地面は荒れており、自校では打撃練習しかできない。ノックは小名浜高で早朝に30分だけ行い、放課後は凹凸のあるグラウンドで、ひたすらバットを振る。6月のいわき地区選手権は「ベルトの高さにきたら振れ」が唯一の指示。この日もほぼノーサインで、9安打中5本が長打だった。実戦形式など緻密な練習はできていない。それなら、1人1人が打つしかない。若林監督は「なぜか後攻を取った。守りから入ろうなんて思うからこう(1回に3失点)なる」とあくまで攻めの姿勢を求めた。言い訳と無理をせず、やってきたことだけを愚直に体現していく。【今井恵太】