<高校野球熊本大会:文徳4-2ルーテル学院>◇19日◇4回戦

 文徳が女子W杯ドイツ大会で優勝したなでしこジャパンばりの「笑顔力」でルーテル学院を下し、3年ぶりに8強入りした。ミスを犯しても、リードを許しても、全員で笑って励まし合うポジティブシンキングで、プロ注目右腕を擁すシード校を撃破した。

 ノーシードの文徳が、なでしこジャパンにも負けない「スマイル野球」でシード校を倒した。平井洋介監督(33)が「チームのテーマは『笑顔』。(勝利は)失敗しても笑顔を絶やさず、選手が前向きだった結果。ぼくは顔が少し引きつっていましたがね」と満面の笑みでナインをたたえた。

 石井涼介投手(3年)の暴投に守備エラーがからみ、初回にいきなり1点を先制されるなど、4回までに2度リードを許す苦しい展開。しかし、プレッシャーを笑い飛ばし、力に変えてきたナインには確信があった。2-2の5回にルーテル学院のプロ注目右腕、村田がリリーフ登板してきたが、気後れすることはなかった。「(米田は)打席で笑顔だったので、打つと感じていた」(平井監督)。7回2死二、三塁で6番の米田志(3年)が右越え三塁打を放って、勝ち越しに成功した。

 今年の6月、部長から監督となった平井監督は、ドイツW杯で優勝したなでしこジャパンを「お手本」とした。「笑顔力」でイレブンを指揮した佐々木監督を参考にした。この日の試合前ミーティングではW杯決勝の戦いぶりを例に、ピンチの時こそ心の余裕を持つことの大切さなどをナインに説いた。平井監督は「笑顔の大切さは感じていましたが、なでしこジャパンの活躍で確信に変わりましたね」と笑った。

 同校は1年前からサッカーJ2熊本のメンタルコーチを招聘(しょうへい)している。そこで学んだポジティブシンキングを重視したメンタル面の安定も勝負強さにつながった。

 準々決勝は3季連続甲子園を狙う九州学院戦。しかし、坂本航大主将(3年)は「なでしこの活躍はモチベーションになります。次も感謝の気持ちと笑顔で全力プレーします」と意気込んだ。【菊川光一】