<全国高校野球選手権:能代商5-3神村学園>◇9日◇1回戦

 神村学園(鹿児島)が能代商(秋田)にまさかの逆転負けを喫し、2度目の出場で初の初戦敗退となった。エース久保大星(3年)が6回に乱れ、失策も絡んで4失点で涙した。

 167センチの神村学園の小さなエース久保は「大星」の名前通り甲子園で輝くことはできなかった。能代商に敗れ初戦敗退。「ここぞというところで踏ん張れなかった。みんなに申し訳ないです」と悔し涙にくれた。

 5回までは2安打1失点と自分のペースだった。4回、暴投での初失点も「緊張が解けてよかった」と言うほど。だが6回、突然乱れた。1死から3連打で1点差とされると一、三塁から二ゴロでうちとるはずが、二塁手の岩元がホームへの送球をそらし(記録は野選)同点に追いつかれた。その後、安打と犠飛を許しこの回4失点。「あの回はコースを意識しすぎて低めへの意識がなかった。僕のリズムが悪かったから。内野の失策は僕の責任です」。逆転を許しエースとして言い訳はしなかった。

 背番号1を背負って甲子園のマウンドに立つのが夢だった。「自分が甲子園に立つまでは絶対甲子園を見に行かない」と心に誓い、夢をかなえた。中学まではエースだった。高校入学時は体が小さいため投手を断念しかけたが、神村学園だけは「投手で来てほしい」と投手の道を開いてくれた。直球は130キロ後半。「小さいけど小さいなりの投球はできる」。打者を打ちとるには制球力しかないと、徹底してコントロールをみがいてエースナンバーをかち取った。

 9回は柿沢にマウンドを譲り、ゲームセットはベンチで迎えた。「まだまだ先まで野球をやりたかった」。小さな体でチームを支えてきたエースの最後の夏が終わった。【前田泰子】