<高校野球南北海道大会:札幌一6-5札幌日大>◇22日◇決勝◇札幌円山球場

 涙が止まらなかった。整列を終えた札幌日大ナインはベンチに引き揚げるなり、声を上げて泣き崩れた。「たくさんの応援のおかげでここまで来られた。いい試合だったけど。結果が出なかった。悔しい」と小笠原主将。6回まで3点リードした。7回に逆転されても8回に再び追いついた。1点届かなかったが、全力は尽くした。

 この日は午前8時から1時間半、チーム全員で準決勝の北海-札幌一戦のビデオを見て、相手エース知久将人投手の投球を頭にインプットした。「肩口から入るスライダーをたたく。イメージはできていた」と鎌田左翼手。2、5回に連打で2点ずつ挙げ、大会屈指の右腕をマウンドから引きずり下ろした。夏の南大会初の決勝進出で、最後まで相手を苦しめた。

 森本卓朗監督(31)のメッセージを79人の部員全員で体現した。「打線のつながりは、気持ちのつながりだ」。それはグラウンドだけじゃなかった。前日21日の準決勝後、井桁(いげた)貴敏(3年)らメンバー外の3年生が、レギュラー選手たちのマッサージを買って出た。「一生懸命、戦ってもらいたかったから」。3打数2安打2打点と気を吐いた鎌田は「連戦で体も張っていたから、とても支えになった」と振り返った。

 水野大中堅手は「札幌日大の歴史をひとつ塗り替えられたかもしれない。でも、もうひとつ勝ちたかった」と涙をぬぐった。5打数4安打と爆発。4番としてチームをけん引した。春の全道大会は、父正博さん(54)が大腸がんの手術直後で入院中。勇姿を見せることができなかったが、今夏は4試合すべて観戦。敗れはしたが「父の前で自分のプレーを出し切った。良かった」と胸を張った。02年春以来、10年ぶりの甲子園にはたどり着かなかったが、思い出のつまった夏になった。【永野高輔】