<全国高校野球選手権:日大山形4-3明徳義塾>◇19日◇準々決勝

 日大山形が明徳義塾(高知)に競り勝ち、山形県勢初の4強入りを決めた。右腕エース庄司瑞(3年)が、6安打3失点で3試合連続の完投勝利を挙げた。花巻東(岩手)も5-4で鳴門(徳島)に勝ち、準決勝進出を決めた。東北勢2校の4強入りは1989年(平元)以来、史上2度目。準決勝は明日21日に行われ、日大山形は第1試合で初出場の前橋育英(群馬)と対戦する。

 灼熱(しゃくねつ)のマウンドで、両手を広げて喜びを爆発させた。9回2死、日大山形エース庄司の159球目。この日最速の139キロで、最後の打者を二ゴロに打ち取った。「こんな舞台に立てて幸せです」。2回戦の日大三(西東京)、3回戦の作新学院(栃木)、そして明徳義塾。優勝経験校を立て続けに撃破し、県勢初の4強入りを決めた。

 「打たれたら、ランナーを出したらどうしよう」。マウンドに上がる度にビクビクしていた1年前とは違う。1点を勝ち越した直後の8回裏。連続四球と死球で1死満塁のピンチを招く。荒木準也監督(41)の脳裏には、県勢初の4強入りを阻まれた悪夢がよぎっていた。06年夏の準々決勝早実戦。「あの時も8回の一、二塁から死球を出して。そこからホームゲッツーを取れずに逆転された」。が、庄司はそんな“負の歴史”を吹き飛ばした。

 8番馬場への4球目だ。「スライダーのサインを見て、(捕手の)浅沼がスクイズに気付いているんだと思った。ボール気味に投げた」。バントが難しいコースで失敗を誘い、捕邪飛に打ち取った。大歓声に交じって聞こえる、仲間からの絶え間ない掛け声。「泣きそうになりながら」後続を断った。

 エースの意地だった。優勝候補の日大三との対戦が決まり、荒木監督が「俺は正直、いやだ」と漏らした一方で「楽しみです」と強気に宣言した。3回戦の試合後は、腹痛に見舞われて帰りのバスに乗り込むのが遅れた。

 この日は経験のない左足のしびれに襲われた。「責任感とか、打者からの圧力がすごいからだと思う」。3回戦で本塁打を打たれた時も「雰囲気が悪くなるから」と無理やり笑顔をつくった。経験のないプレッシャーを一身に背負い、力の限り腕を振った。

 日大三戦で公式戦初の完投勝利を挙げて以降、1度もマウンドを降りていない。「ここまで来たら、日本一を目指したい」。初の4強入りを決めた1勝は、県勢春夏30勝目。勢いそのままに、東北勢初の頂点まで突っ走る。【今井恵太】