第96回全国高校野球選手権秋田大会(7月11日開幕)の組み合わせ抽選会が26日、行われた。能代は伊藤康夫監督(47)と急成長した次男の左腕健友(3年)が「父子鷹」で92年以来22年ぶり5度目の甲子園を狙う。

 ノーシードから22年ぶりの甲子園を狙う能代の1回戦の相手は横手城南に決まった。角館、秋田南、金足農などの強豪、古豪ひしめくブロックに入り、伊藤監督は「1戦1戦気が抜けない」と表情を引き締めた。

 チームの軸は堀内健人、伊藤健友の3年生左腕2人。1年夏からマウンドに立つ堀内に対し、伊藤は2年夏までずっとBチームで過ごした。入学時の体重は55キロ。伊藤監督も「試合に絡むような選手じゃなかった」と振り返る。昨夏、甲子園初出場で優勝した前橋育英の荒井父子の活躍も人ごとでしかなかった。

 だが、この1年足らずで伊藤は急成長した。きっかけは「お前が上がってこなければ堀内も上がってこない」という先輩の言葉だった。「夏に投げたい」という思いで体重を70キロまで増やすと、球速は100キロ台から130キロ近くまでアップ。昨年8月の青森山田との練習試合で3回18失点したのを機に上手から横手に変えたフォームもしっくりきた。初めて背番号1をつけた春季県大会初戦で角館の好右腕相馬和輝(3年)と延長13回の投手戦を演じ、1-2で敗れたが自信をつけた。エースの座を奪われて「すごく悔しかった」という堀内とともに競い合いながら夏を待つ。

 「おやじの下でやりたい」。伊藤にとって能代に進学するのは自然な流れだった。学校では「伊藤先生」、家では「お父さん」。家で野球の話をすることはほとんどないが、昔、家に飾られていた父の高校球児時代の写真は心に残っている。84年夏、能代対金足農の決勝。能代の2番手で登板した右下手投げの伊藤は最終回に3失点し、5-6で逆転負けした。それから30年。伊藤は初めての夏のマウンドへ「全部完封するつもりでいく」。父と一緒に甲子園の土を踏むための戦いが始まる。【高場泉穂】

 ◆伊藤健友(いとう・けんゆう)1997年(平9)2月15日、秋田県能代市生まれ。能代五小4年から五小フェニックスで野球を始め、能代東中では主に投手、一塁手。能代では2年秋からベンチ入りし、今春から背番号1を背負う。171センチ、70キロ。左投げ左打ち。家族は両親、兄、弟。血液型O。

 ◆能代

 1926年(大15)創立の県内屈指の進学校。生徒数は695人(女子318人)。野球部は29年創部。甲子園出場は夏4度。OBに阪急(現オリックス)で284勝のサブマリン山田久志氏。所在地は能代市高塙2の1。一関雅裕校長。