<高校野球埼玉大会:春日部共栄7-2市川越>◇27日◇決勝◇大宮公園

 春日部共栄が、エース左腕金子大地投手(3年)の8安打2失点完投で、9年ぶり5度目の甲子園出場を決めた。1点を追う8回に6点を奪って逆転。就任35年目のベテラン本多利治監督(56)は今夏、春夏通算甲子園10勝に挑戦する。

 「埼玉NO・1左腕」の称号を勝ち取った。両腕を突き上げ、何度も跳びはねる。最後の打者を二ゴロに仕留めると、春日部共栄のエース金子は喜びを爆発させた。「最後は5点差もあったのに緊張した。小学校からの夢がかなってうれしいです」。市川越の上條将希(3年)との左腕対決に投げ勝ち、昨春センバツV腕の浦和学院・小島和哉(3年)は3回戦で姿を消しており、チームとともに金子が埼玉の頂点に立った。

 1点を追う8回に上條を攻略した。1死満塁から高野凌治外野手(2年)の左犠飛で追いつき、2死満塁から佐野尚輝内野手(3年)の中前2点適時打で勝ち越した。この回、一挙6点を奪って勝負を決めた。上條には、昨秋の県大会で0-1の完封負け。12三振を奪われ、関東大会もセンバツも失った。そこからがチームの出発点だった。

 「明るく、楽しく、元気よく」が部のモットーだ。試合中も選手に「笑え」と声をかける。だが個の力はあるのにまとまりを欠き、勝負弱く、ミスで自滅。あいさつも言葉遣いもなっていない。そして本多監督は賭けに出た。「言ってることができるまでグラウンドに出ない」と宣言、年明けまでの約1カ月半を選手の自主性に委ねた。同監督は試合後、「ミスの後もカバーし合っていた。やっとチームになった気がしました」と喜んだ。

 本多監督は学校創立時から監督に就任し、今年で35年目。甲子園には過去春夏通算6度出場で、9勝を挙げている。「冗談で、甲子園10勝しないと死ねないと言ってきた。埼玉の代表として恥ずかしくない試合をしたい。ただ、甲子園は選手のものですから」。甲子園を意識して選んだメンバーが、最後の夏に大きく成長した。金子は「1試合ずつ緊張せずにやって全国制覇したい」と力強く宣言した。ナインの笑顔が、甲子園から全国に届けられるはずだ。【浅見晶久】

 ◆金子大地(かねこ・だいち)1996年(平8)7月25日生まれ、千葉・松戸市出身。小学3年から野球を始め、セントラルパークスでは一塁手と投手。松戸小金中では軟式野球部に所属し投手。昨年末は県選抜チームでオーストラリア遠征を経験。「大地」という名前は父浩さん(48)が、水泳のソウル五輪金メダリストの鈴木大地氏を尊敬していたから。175センチ、77キロ。左投げ左打ち。家族は両親。

 ◆春日部共栄

 1980年(昭55)に創立された男女共学の私立校。生徒数1652人(女子642人)。野球部も80年創部で部員は121人。主なOBは小林宏之(西武)、平塚克洋(阪神スカウト)、土肥義弘(サムライサンディエゴ投手コーチ)ら。所在地は春日部市上大増新田213。宇野禎弘校長。◆Vへの足跡◆2回戦6-1桶川西3回戦7-3大宮西4回戦10-0慶応志木5回戦2-1川越東準々決勝4-2本庄東準決勝3-1大宮東決勝7-2市川越