<高校野球南北海道大会函館地区>◇21日◇1回戦

 夏の甲子園をかけた戦いが、南・北北海道10地区のトップを切って函館でスタートした。開幕戦で大野農が八雲を4-3の接戦の末に下し、5年ぶりの公式戦勝利を手にした。1-1の6回表、チームを引っ張ってきた白石敏明主将(3年)からの4連打で3点を奪い、うれしい1勝を呼び寄せた。22日には札幌、室蘭、十勝の各地区も開幕する。

 試合後、大野農の控室で先輩たちの分も含めた歓喜が爆発した。「ヨッシャー!」「ウオーッ!! 」。負け続けた5年間のモヤモヤを発散させた。現ナインにとっても入学後初の公式戦勝利。白石主将は「勝つことしか考えてなかった。何とも言えないぐらいうれしい」と声を弾ませた。

 1-1で迎えた6回だ。簡単に2死となったが、連打で一、二塁とチャンスを広げると、蛯子京太右翼手(同)の右中間三塁打で2点。さらに小泉博昭投手(2年)の二塁打でこの回3点目。以後は継投で八雲の反撃を抑え、1点差で逃げ切った。

 八雲には今年の練習試合で勝っているが、昨年までは大敗が多かった。そこを相手に10安打と攻め勝ち、失策は投手のけん制悪送球1つだけ。チームは確実に成長していた。原井洋行監督(52)は「白石の力が大きい。野球に対する情熱とまじめさでチームを引っ張ってきた」という。

 白石は小学生の時に腸の病気で入退院を繰り返し、中学3年までは好きな野球を控えていた。高校入学後も体調と相談しながら練習量を調整する日々が続くが、休んだことは1日もない。誰も練習に来ない日でも、主将の姿は常にあった。

 「春に1回戦で負けてから、1人1人が個々の力を伸ばすよう練習してきた。みんなが1つになれたから勝てたと思う」と白石。続く函館商との2回戦も「120%の力を出して勝ちにいきたい」。頑張り屋主将の下、大野農が突き進む。【本郷昌幸】