<高校野球岩手大会>◇23日◇準決勝

 130年の歴史を誇る県内トップの進学校、盛岡一が1-0で盛岡大付を破り、16年ぶりの決勝進出を果たした。右腕エース菊池達朗(3年)が、6安打6三振で公式戦初完封勝利。相手のミスで挙げた1点を守り抜いた。花巻東は8回コールドの14-3で盛岡中央を下し、2年ぶりの決勝進出。24日の「菊池対決」に、甲子園切符の行方がかかる。

 球場にメロディーが放送されない。三塁側内野席のバンカラ応援団、そして900人以上の全校生徒がアカペラで校歌の軍艦マーチを歌いだすと、盛岡一ナインもそれに続いた。強豪私立校との熱戦を制した選手の功績をたたえ、生徒の歌声は高々と響き渡った。

 身長167センチのエース菊池達が、またも好投だ。マウンドでは最速136キロの直球に、多彩な変化球で的を絞らせない。攻めの姿勢は打者としても同じ。7回先頭で、死球で出塁。犠打で二進後の2死二塁から三盗を試みると、相手捕手が悪送球。一気にホームを駆け抜けた。打線が2安打に抑えられる中、相手のミスにつけ込み自らつかんだリード。「疲れてたけど関係なかった」と菊池達は、気力で公式戦初のシャットアウトをやってのけた。

 勉強の成績について「聞かないでください」と笑う菊池達だが、将来の夢は教諭だ。25日、甲子園切符をかけて戦う花巻東・菊池雄とは、滝沢いわてシニア時代に何度も対戦。今大会は全5試合で先発しているが「いい投手と投げ合えるのはうれしい。いつか教え子に自分の話を聞かせるためにも、腕がちぎれても絶対に先発したい」と話した。

 旧制中学時代から9度の甲子園出場を誇る古豪。最後の出場は78年夏で、前回決勝進出時の93年は久慈商に敗れた。「力はないので、頭を使って丁寧に、クレバーな投球でいきたい。今日みたいな試合になれば勝てると思う」と菊池達。学校の名誉を背負い、頭脳をフル回転して最大の敵に挑む。【由本裕貴】