第92回全国高校野球静岡大会(7月10日開幕)の組み合わせ抽選が26日、静岡市内で行われた。今年は草薙球場の改修工事のため、開幕戦が東、中、西部の3地区で同時に行われる。異例の分離開催で開幕カードに決まったのは、東部が三島北対市沼津(沼津・愛鷹球場)、中部が藤枝北対島田樟誠(島田球場)、西部が磐田北対興誠(浜松球場)。選手宣誓も3人が選ばれ、思い出がいっぱいの大会になりそうだ。

 開幕カードに選ばれたチームの主将が1人、また1人と並んでいく。横に広がったその数は実に6人。計6校が各地区の開幕戦に選ばれた。例年の2校から3倍に増えた“記念試合”。浜松球場で戦う興誠の安田晃三主将(3年)は「すごくラッキーです。うちは目立ちたがり屋が多くて見せることが好きなんで、開幕戦は良いですね。しかも、自分たちの本拠地で試合ができる。気持ちよく戦えます」と笑顔で喜んだ。

 3倍に広がった笑顔の数は、異例の分離開催が生み出した「功」だった。例年開会式を行う草薙球場が4月から約1年間、改修工事に入った。県高野連は周辺環境などの問題から、聖地以外に全118校が集まれる会場はないと判断。開会式を縮小して東、中、西部の各地区ごとに行う「開始式」の実施を定めた。

 草薙開催では、静岡市内の学校を中心に選ばれた。だが、分離開催によって、それ以外の学校でも「記念切符」を手にできる確率は高まっていた。“当選試合”が読み上げられるたびに会場から声が上がり、恩恵を手にした市沼津の小山智己主将(3年)は「相手(三島北)が近い学校だからやりにくいけど、昨年から開幕戦をやってみたいと思っていたのでうれしい」。対する三島北の浅田和之主将(3年)は「まさか自分たちが」と驚き、磐田北の芦沢遼太主将(3年)も「心に残ります」と喜んだ。

 そんなうれしさは中部も一緒だ。藤枝北の曽根孝祐主将(3年)が「隣に中部が来たら開幕戦になるかなぁと思っていた」とドキドキしながら待っていると、島田樟誠が後から横へ。地元・島田球場での権利を手にした田村恒喜主将(3年)は「狙っていました。地元なのでみんな来られます」とガッツポーズした。たくさんの笑顔と驚きをもたらした、今年限りの分離開催。7月10日。熱く長い夏は、3会場で幕を開ける。【今村健人】