<高校野球北北海道大会>◇27日◇代表決定戦◇名寄地区予選

 名寄地区代表決定戦で稚内大谷が10-4で士別翔雲を破り、2年ぶり25度目となる北北海道大会(7月17日開幕・旭川スタルヒン)へ一番乗りを決めた。大会前、北北海道決勝で過去3度サヨナラ負けした先輩たちの試合映像を見て発奮。道内で唯一甲子園出場校を出していない最北の地区から、再び夢を追いかける。名寄産も2年連続2度目の代表権を獲得した。

 稚内大谷のエース秋葉陸人(3年)はスコア以上に苦しんだ。大会前に背筋を痛め、初戦の剣淵戦で悪化。切れのある本来の直球、スライダーは影を潜めた。「7割のスピードでした」。3者凡退は3度、残り6回は走者を背負った。128球、6安打4失点で完投もマウンドでは顔をゆがめた。だが、痛みをこらえて我慢を重ねた投球の裏にはチームの思いがあった。

 「先輩たちの無念を晴らしたい」。

 ナインは初戦前日の24日、1枚のDVDを見た。80、81、93年の北大会決勝で先輩が敗れ去った映像が入っていた。聞いてはいたが、実際に見たのはほとんどの選手が初めてだった。泣きだす選手もいた。製作したのは93年準優勝OB、市川裕幸さん(35=稚内市消防署)。延長10回、旭川大高に敗れた時の遊撃手で、2年前からは外部コーチとして指導に当たっている。過去にしっかりと目を向け、苦しさ、厳しさを乗り越えてほしいという願いが込められていた。

 主将の阿部翔太三塁手(3年)は「昔のことで人ごとと思っていましたが、映像を見て自分のことのように悔しかった」と振り返る。それは、秋葉の胸にもしっかりと刻まれていた。監督で2度、部長として1度、屈辱の敗戦を経験した貝森好文部長(56)はDVDは見ていないが、1球の怖さ、ワンプレーの大切さが骨身に染みこんでいる。今年のチームに手応えを感じているだけに「まだまだ」と辛口だ。

 稚内大谷ナインは、名寄地区の悲願と先輩の思いを胸に旭川に乗り込む。【中尾猛】