<高校野球福島大会>◇9日◇1回戦

 「逆転の田村」が劇的勝利で開幕戦を飾った。昨夏県16強の田村が5-4で郡山北工にサヨナラ勝ち。今夏の東北6県の白星第1号となった。8回裏に1点勝ち越したが、9回表に追いつかれる大接戦。9回裏1死二塁から、3番吉田健祐主将(3年)が右越え二塁打を放ち、決着をつけた。6月下旬の県中選手権で全4試合中逆転勝ち3試合で優勝した勢いを夏につなげた。

 劇的な結末に、ヒーローの笑顔はもみくちゃにされた。9回裏1死二塁、吉田は甘く入った内角の直球を強振。打球を確認する前に、右手を突き上げた。サヨナラ勝ちを決めても全力疾走を止めない。三塁を回ったところで出迎えた仲間に激突するように抱き合う。「打った瞬間抜けた気がしました」と興奮を隠せない様子だった。

 6月の県中選手権では準々決勝からの3戦すべてで逆転勝ち。練習試合では5回を終えて0-5からひっくり返したこともあった。「ビハインドに焦りはない」と吉田も自信の表情を浮かべる。

 安積(福島)で01年のセンバツに出場した本田和寛氏(27)が、4月から部長に就任した。服装など乱れていた生活態度を徹底指導。本田部長は「部活だけやるのはダメ」と野球以外の姿勢も問われる21世紀枠出場の経験を生かしている。選手と年が近く、悩み相談にも乗る「兄貴分」との一体感が逆転を生むチームの原動力となった。

 5日に学校で開かれた壮行会で、吉田は全校生徒に「全国制覇する」と堂々宣言した。この日は、同校の教員も「記憶にない」という全校応援にも支えられた。「大口たたいて負けたら格好悪いですから」と吉田。「有言実行」への第1歩となる劇的な勝利で、みちのくの夏が幕を開けた。【湯浅知彦】