<高校野球静岡大会>◇11日◇1回戦

 三ケ日が磐田西に延長11回1-0でサヨナラ勝ちし、6年ぶりに初戦突破した。前夜に先発を告げられた左腕の知久(ちく)侑樹投手(2年)が、昨秋と今春県大会16強の強敵を散発5安打で完封。11回裏1死一、二塁から「背番号1」ながら右翼手で出場の高山祐太朗主将(3年)が、一塁線を破り貴重な1点を奪った。

 極限まで高まった気迫をバットに込めた。高山主将は、真ん中高めの甘い直球を見逃さなかった。0-0で巡ってきたサヨナラの舞台。4人しかいない3年生の代表として、そして大事な初戦に登板できなかった“エース”として「絶対に打ちたかった」。痛烈な打球が一塁線に抜けた。笑顔で駆け寄る仲間に囲まれて、1人だけ泣いた。「勝ったと思ったらうれしくて…本当にうれしくて」。涙は試合後も止まらなかった。

 公式戦初先発の知久が、大金星のおぜん立てを調えた。相手主軸に左打者が多かったこともあり、大石卓哉監督(30)から前夜に急きょ先発を告げられた。打者に背中を見せる変則フォームから、横手でテンポよく投げ込む最速120キロそこそこのクセ球で、面白いように凡打の山を築いた。「最後は少しへばったけど、先輩やスタンドの応援に励まされました」と眼鏡の奥の目を輝かせた。

 過疎化や少子化の影響で年々生徒数が減少し、5年後には気賀、引佐との合併が決定している。昨年18人の新入部員が加わるまでは、常に廃部の危機にあった。「1年の時は部員10人。野球ができるだけでうれしい」と高山は振り返る。就任3年目の大石監督の熱血指導に全員が応え、がむしゃらにボールを追いかけ、驚異の成長を遂げた。「ベストゲームです。こんなに粘れたことは1度もなかった」と同監督。次戦は、優勝候補の静清の胸を借りる。三ケ日の最高の夏はまだ続く。【大石健司】