<高校野球福島大会>◇12日◇2回戦

 「いわきのミスターゼロ」が止まらない。いわき光洋のエース小松兼也投手(3年)が、参考記録ながら2試合連続の無安打無得点を達成。10-0で相馬農に5回コールド勝ちした。10日の猪苗代との1回戦(11-0、7回コールド)から中1日で快投を続けた。

 この夏、まだ誰にも打たれていない。被安打ゼロ行進を続ける小松は低めの直球で追い込み、落差のあるカーブで三振の山を築いた。初回2死から死球で走者を許しても、必勝配球で三振に仕留めた。奪三振は1回戦の15に続く2ケタの10。福島大会では77年、福島商・三浦広之投手以来の2試合連続無安打無得点を達成した。それでも「今日は今日。次勝つことだけ考えています」と、おごることはなかった。

 10日の猪苗代戦は7回を1四球のみだった。翌日11日は新聞を4紙買い込み、自分の記事を読んだが「これはこれで終わり」と区切りをつけた。試合前、出川亮監督(29)が「ノーヒッターが次の試合で打ち込まれるのはよくある。でもそれでは凡人だぞ」とハッパをかけても「はい」とだけ答え、再び快挙を達成してみせた。

 マウンドでみせる集中力はそろばんで養った。小1から始め、9段の腕前を誇る。中学では野球と両立させてきた。母由美子さん(45)は「どっちも一生懸命やっていました」と振り返る。試合に登板した直後、ボロボロの指でそろばんの検定を受験したこともある。指が震え、うまく弾けなかったが野球を言い訳にしなかった。

 マウンドでもその姿勢は変わらない。昨秋、勿来工の小野一生(かずき)左翼手に1試合で3本塁打を浴びた。前日に修学旅行から戻ったばかり。調整不足は否めなかったが不平は言わず、悔し涙を流した。父光宣さん(49)は「何かに理由をつけたりしない子」と話す。

 3回戦(17日)は因縁の勿来工と対戦する。「自分の投球をして抑えたい」。連続快投でリベンジマッチへの勢いをつけ、さらにゼロ行進を続けるつもりだ。【湯浅知彦】