<高校野球北北海道大会>◇17日◇1回戦

 旭川龍谷は加藤龍之介右翼手(3年)の勝ち越しソロアーチで、粘る帯広柏葉を3-2で振り切った。

 加藤のバットが、重苦しい雰囲気を打ち破った。2-2の8回裏無死。初球を強振した。白球はレフトスタンドを越え、芝生席で跳ねた。価値ある勝ち越しソロ。「手応えはありました」。三塁を回ったところで自然と右拳を突き上げた。

 帯広柏葉にリードを許す苦しい展開だった。得点圏まで走者を進めながらあと1本が出ず、6回まで7残塁。7回に3番千代の適時打でようやく同点に追いつき、直後の8回先頭で打順が回ってきたのが加藤だった。終盤での勝ち越しに梅田誠監督(39)は「3年生の意地ですね」と脱帽した。

 父典彦さん(43)も旭川龍谷OBで3年時には主将を務めた。小学生のころから父のスパルタ指導を受けてきた。暗くなるまで近所の公園でボールを追いかけ、家に帰れば居間の窓を鏡代わりに、バドミントンのシャトルを打ち込んだ。自宅は札幌だが、父と同じ学校を選んだのも自然な流れだった。

 父は試合前日の16日が誕生日。加藤は「小さいとき、父が野球でほめてくれるのは本塁打を打ったときだけ。1日遅れの誕生日プレゼントですね」と照れた。2月、練習中に転倒し左手親指を骨折。今大会前には左太ももを肉離れとけがに見舞われたが、それを乗り越え、親子鷹が目指す甲子園にまた1歩近づいた。【小林明央】