<高校野球静岡大会>◇17日◇1回戦

 創部110年の伝統校が“知略”で勝った。榛原が静岡大成の大会屈指の右腕・牧ケ谷和成投手(3年)を攻略し、3-0で勝利した。3回表に先発した松浦大樹投手(2年)に早くも代打を送り、そこから先制の口火を切るなど采配がズバリ。エース森田雄大(2年)を抑えに回す継投策で、3投手が2安打0封リレーを演じた。

 継投の最後はエース森田が締めた。榛原が3投手でつないだ81球。静岡大成のスコアボードには「0」を9つ並べた。2安打無失点リレー。好投手の牧ケ谷に「3本の矢」で粘り勝ち、鈴木祥充監督(47)は「牧ケ谷くんは素晴らしい投手。ウチはどうしても継投したかった」と狙い通りの展開に、胸をなで下ろした。

 創部110年を誇る県内有数の進学校。その“知略”が奇襲を仕掛けた。先発は予想を覆す背番号11の松浦大。「エースを最後に持って行きたかった。ただ、周囲が納得するのは森田の先発。ずっと怖かった」(同監督)と悩んだ末の決断だった。それでも、前日に指名された松浦大は「楽しみだった。いい形で後ろに回したかった」と度胸満点の投球。2回1安打21球で、リズムがつくられた。

 奇襲が成功したかと思えば、次の手も素早かった。3回表、先頭の松浦大に打席が回ると、もう代打を送った。すると、打席に入った栗林孝太(3年)が右越え三塁打を放ち、4番大石祐也中堅手(3年)の左前2点適時打などで3点先制する呼び水となった。「3点勝負」(鈴木監督)とにらんだ試合で、動いてツキを呼び込んだ。

 2番手の大石真輔投手(3年)が、昨秋から転向した右下手で翻弄(ほんろう)し、3回25球で許した走者は四球の1人だけ。そして森田の1安打35球で逃げ切った。「抑えでも、自分の役割をやろうと思った。完投は1人の勝利だけど、継投はみんなの勝利なんで」と森田は言った。2年ぶりの校歌は、全員でつかんだ勝ちどきだった。【今村健人】