エンゼルス大谷翔平投手(28)の「付加価値」は、やはり相当高いようだ。エンゼルスの身売り話のことだ。モレノ・オーナーが8月に球団売却を検討していることを発表し、最近になって買収に興味を示す「買い手候補」の名前が次々と報じられている。米経済誌フォーブスや米情報サイト「スポーツナウト」などによると、球団入札競争は激しいものになりそうだという。その大きな理由は大谷の存在で、買い手候補たちは2023年シーズン後にFAの権利を得る大谷の残留を前提として買収を目指しているようだという。MLBの顔であり国際的なアピール力のある大谷は、買い手候補にとってやはり魅力的。「スポーツナウト」は「新オーナーは、彼がロースターにいるチームを欲しがっているようだ」としている。

ここまで買い手候補として名前が上がっているのは、まずロサンゼルス・タイムズ社のオーナーで富豪医師の中国系南アフリカ人パトリック・スーンショング氏。NBAロサンゼルス・レーカーズのオーナーの1人でもあり、約10年前にはドジャースの買収を狙ったこともある富豪で、資産は推定89億4000万ドル(1兆2500億円)とされている。自身が所有するロサンゼルス・タイムズ紙でも「買収を検討中」と大きく報じられていたので、信ぴょう性は高そうだ。

その他、名前が挙がっているのがサンフランシスコに本拠地を置くNBAゴールデンステート・ウォリアーズのオーナーグループ、ハリウッドの投資グループ、地元南カリフォルニアの投資グループ、そして個人名は出ていないが日本人もいると9日付の米経済誌フォーブス電子版が伝えていた。

ウォリアーズは筆頭オーナーが投資家のジョー・ラコブ氏だが、同氏は青少年期をアナハイムで過ごしエンゼルスファンだったという。南カリフォルニアでは、サンタモニカの投資会社「マーチキャピタル・パートナーズ」の共同同業者で富豪一族の一員として知られるグレゴリー・ミルケン氏が興味を示していると伝えられている。球団売却のプロセスでは、名だたる富豪たちが入札競争をすることになりそうだ。

しかし大谷の残留が前提とするならば、売却手続き完了のリミットは来季終了までということになる。エンゼルスは、現オーナーのモレノ氏が球場とその周辺の土地をアナハイム市から買い取り再開発する計画だったが、これに関する市長の汚職が発覚し、中止となった。本拠地アナハイムスタジアムは2029年までリース契約を結んでいるが、再開発の話が流れた現在は流動的。そうした事情から球団売却は複雑な交渉になるかもしれず、とんとん拍子にいくかどうか注目だ。フォーブス電子版の記事によると、球団身売り話が具体的に動くのは今月末以降になりそうだという。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)