2度目のトミー・ジョン手術に踏み切っても大丈夫なのだろうか。エンゼルス大谷翔平投手(29)が右肘の内側側副靭帯(じんたい)を損傷。今季は投球しないことになった。PRP(多血小板血漿=けっしょう)治療など保存療法か、メジャー移籍1年目だった18年以来、5年ぶりとなる靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)となるか。セカンドオピニオンを聞いての判断となる。これまで複数回の同手術を経験した投手の実績を調べてみた(数字は25日現在)。

代表的な成功例は、ネーサン・イオバルディ投手(レンジャーズ)だ。高校生だった07年に1度目の手術。08年にドジャースからドラフト指名されてプロ入りし、11年にメジャーデビュー。マーリンズ、ヤンキースへと移籍し、15年には14勝3敗でリーグ最高勝率(8割2分4厘)をマークした。9勝8敗だった16年に2度目の手術。17年は登板がなかったが、復帰した18年にはレッドソックスに移籍し、ワールドシリーズ優勝に貢献した。今季は11勝3敗、防御率2・69で、先日までア・リーグの防御率1位に立っていた。しかし、右前腕部の張りで現在は離脱中。これが手術の影響なのかは気になるところだ。

◆1度目から2度目の手術間は134試合で38勝46敗、防御率4・21。

◆2度目の手術から現在は125試合で40勝25敗、防御率3・81。

新人年(21歳)~6年目(26歳)までと、8年目(28歳)から13年目(33歳)。経験なども違うので単純比較はできないが、2度目の手術後は明らかに成績が上がっている。

カブスのジェームソン・タイヨン投手(31)も成功例だろう。10年にドラフト1巡目、全体2位でパイレーツ入り。マイナー時代の14年に1度目の手術。2年後の16年にメジャー昇格した。18年に14勝を挙げたが、191回も投げたのが影響したのか、19年に2度目の手術に至った。20年は登板がなく、21年にヤンキースへ移籍し8勝。22年は14勝を挙げて、FAでカブスに移籍した。大谷とは縁があり、ヤ軍時代の21年6月29日は2打席連続本塁打を浴びている。

◆1度目から2度目の手術間は、82試合で29勝24敗、防御率3・67。

◆2度目の手術から現在は、84試合で29勝19敗、防御率4・49。

防御率はダウンしているが、勝率は大きく上昇した。カブスは4年6800万ドル(約98億6000万円)で契約している。

既に引退したが、通算クリス・カプアーノ投手(45)は、ブルワーズ、ドジャースなどで通算77勝を挙げた。02年に初の手術を受けた後、03年にダイヤモンドバックスでメジャー昇格。04年にブルワーズに移ると、05年から18勝→11勝と活躍。しかし、219回、221回1/3と投げ過ぎが影響したのか、07年は5勝に終わると、08年に2度目の手術を受けた。10年にメジャー復帰し、11、12年は2年連続2桁勝利と復活した。親日家で知られ、14年の日米野球で来日した時は「日本の野球スタイルが好き。和食も好き」と話していた。

◆1度目から2度目の手術間は、124試合で42勝48敗、防御率4・39。

◆2度目の手術から現在は、192試合で35勝44敗、防御率4・37。

勝敗も防御率もほぼ変化はなかったといえる。

成功例ばかりではない。10年にマーリンズで防御率1位に輝いたジョシュ・ジョンソン投手(39)は、07年に1度目、14年に2度目の手術を受けた。06年に12勝を挙げてブレークしたが、翌年にシーズン中に初の手術。ただし、08年には7勝を挙げて復活。09年には15勝、10年には11勝で2年連続オールスター出場を果たした。11年は3勝に終わったが、12年には8勝。191イニング1/3を投げて再復活した。13年にはブルージェイズに移籍して2勝8敗の成績を残したが、14年には2度目の手術に至った。この後、メジャー登板することなく引退した。

◆1度目から2度目の手術間は、通算131試合で46勝35敗、防御率3・38。

◆2度目の手術から現在は、登板なし。

ジョンソン以外にも、通算41勝(2度目の手術後は7勝)のクリス・メドレン、通算25勝のジャロド・パーカー(2度目の手術後は登板なし)ら、2度目の手術後に低迷した投手は少なくない。

複数回手術を受けた選手の手術間の平均年数は、ジョン・ローゲル氏のデータベースによると4・7年。大谷が18年以来の手術に至れば、ほぼ平均的な間隔となる。

先日、トミー・ジョン手術の第一人者、慶友整形外科病院の古島弘三副院長は「アメリカの論文では、2度目の手術の復帰率は50%ぐらいとなっている」と話していた。また、保存療法の1つでPRP(多血小板血漿=けっしょう)治療についても聞いたが「PRPは効果がないと思う。切れたところが治る、移植した再建靭帯がつながることは、PRPでは無理です。除痛効果は多少あると思うが、それだけで、根本的治療としては1度手術している人には、あまり効果がないと思う。ただ、靱帯ではなくて、前腕の筋肉や屈筋群、肘の内側についている筋肉の炎症であれば、PRPの効果はある」と話していた。

どういう結論になるか分からないが、こうした事例を念頭に置いておきたい。【斎藤直樹】

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「斎藤直樹のメジャーよもやま話」)

エンゼルス対レッズ 2回表レッズ1死一塁、エンカーナシオンストランドの時、カウント2-2から異変が生じ、降板する大谷(左端)。右端はネビン監督(2023年8月23日撮影)
エンゼルス対レッズ 2回表レッズ1死一塁、エンカーナシオンストランドの時、カウント2-2から異変が生じ、降板する大谷(左端)。右端はネビン監督(2023年8月23日撮影)