試合時間の短縮に取り組む大リーグ機構が、今季から投球間隔を20秒に制限するルールを導入する方針を打ち出しています。これに対し、大リーグ選手会は強く反発し、拒否する姿勢を打ち出していますが、機構側は強硬に導入するものと見られています。

 コミッショナーのロブ・マンフレッド氏は昨季の就任当時から試合時間短縮を「公約」のように掲げてきましたが、2017年のシーズンの1試合平均時間(9イニング)は、前年より約4分半伸びて3時間5分11秒(MLB発表)との結果になりました。その大きな原因として、ビデオによるリプレー検証が計1395回も実施されたことが影響していることは言うまでもありません。

 にもかかわらず、投球間隔を制限するというのですから、選手側が反発するのも当然でしょう。米国のデータによると、昨季の投球間隔の平均は22秒。日本人投手では、ダルビッシュ(ドジャースFA)が26・2秒、田中(ヤンキース)が26・0秒、前田(ドジャース)が25・8秒と、多くの投手が影響を受けることになります。

 もっとも、単純にスピードアップすることが、本当にファンのためになるのでしょうか。

 メジャーでは、昨季から投げないで敬遠する「申告敬遠」が導入され、日本のプロ野球でも今季から採用されることになりましたが、そこにも依然として賛否両論があります。今回の投球間隔制限にしても、投手が球を長く持って打者をじらしたり、逆に打者が意図的に打席を外すなど、心理的な「駆け引き」に影響を及ぼすものと見られています。確かに、頻繁にプレートを外し、なかなか投げない投手は考えものですが、その反対に打者に考える時間を与えないように快テンポで投げるのも、基本的には投手の自由です。

 今回の「20秒ルール」について、田中は「野球は“間”のスポーツでもあると思う。その“間”を削られたらどうなるんだろうというのはあります」とのコメントを残していますが、他の投手もほぼ同じような印象を持っているのではないでしょうか。

 ファンが本当に望んでいるのは、数字として記録される短時間の試合なのでしょうか。

 ヤクルト時代の野村克也監督が、ポツリとこぼした言葉を思い出します。

 「いい試合をすれば、ファンは試合が長いとは思わないんじゃないか」。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)