本来、プロスポーツと政治を関連付けることは厄介で、ナンセンスなことでしょう。ただ、今回ばかりは、政治・行政の力が、影響力を持つ可能性があるかもしれません。著名な政治家らが、球界に「?」のひと言を投じたことが、どこまで影響するのか…。

というのも、現時点の米球界では、今後、マイナーリーグの42球団を削減する案が浮上し、議論を呼んでいます。MLB機構は、有望な若手選手の「待遇改善=年俸増」を視野に入れ、将来的に各球団のマイナー組織をスリム化し、大幅な経費削減を推進する方針と伝えられています。

確かに、メジャーの経営とは切り離されたマイナーの各球団は独立採算制で、選手の食事、住宅など環境面の劣悪さを指摘する声は聞こえてきます。その一方で、果てしなく平原が広がるようなのどかな地方都市で、将来のメジャーリーガーのプレーを楽しみに、球場へ足を運ぶファンも少なくありません。たとえば、インディアンス傘下3Aの本拠地で「米国で最も美しいマイナー球場」と言われる、オハイオ州コロンバスの「ハンティントン・パーク」をはじめ、集客、イベント、ファンサービスなど、地域に密着した経営、営業に専念している球団は、地元に根付いて愛されています。

現段階で、どのチームが削減対象となるかは不透明ですが、地方のマイナーチームの削減案に、政治家が異論を唱えるのは、米国ならではなのでしょうか。

機構側の削減案が報じられた後、民主党の次期大統領候補でもあるバーニー・サンダース氏(78)が、米西海岸の遊説先で熱っぽく訴えたことが、野球界への新たな問題提起となりました。同氏は、各地方都市の経済、雇用情勢を踏まえた上で、MLB機構に反論しました。

「マイナーのチームを減少させることは、野球ファン、職員、さらに国中のコミュニティーにとって損失になるだろう。我々は団結してこれらのチームを守らなくてはいけない」。

サンダース氏の発言の真意が、野球への愛情、地方経済への影響、さらには今後の自身へのプラス効果を計算した上なのかは、推測の域を出ません。ただ、その後、100人以上の上下院議員が連名で意見書をMLB側に提出し、マイナー球団削減反対の意向を伝えました。

政治家が異議を唱えたこの削減問題に、MLBのコミッショナー、ロブ・マンフレッド氏は、どう対応していくのでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)