今季の日本シリーズは、ソフトバンクが巨人を2年連続の4連勝で下し、4連覇を遂げました。ソフトバンクの群を抜く強さが目立った一方、8年連続でパ・リーグ球団が制したこともあり、両リーグの格差を指摘する声も聞こえてきます。

DH制の有無が投打のレベル差につながっているとの指摘もあるようですが、メジャーでは、さほど関係していないような気がします。

ワールドシリーズ(WS)でも、スイープ(4連勝)は、さほど珍しいわけではありません。過去20年間では、2004年レッドソックス(対カージナルス)をはじめ4回、スイープで決着がつきました。ただ、ヤンキースが98年から3連覇して以来、連覇したチームはありません。リーグ間の対戦成績にしても、過去20年間のWSは、ア・リーグの9勝に対し、ナ・リーグは11勝。どのチームにもチャンスがあるだけに、現在も戦国時代が続いていると言っていいでしょう。

かつては、メジャーでもア・リーグ優勢と言われた時期がありました。97年から始まったインターリーグ(交流戦)の対戦成績は、04年から14シーズン連続でア・リーグが勝ち越しました。中軸を担うDHの強打者がいることなどがその理由として挙げられていましたが、18年、19年は2年連続でナ・リーグが勝ち越し。今季は初めて互いに5割で引き分けとなりました。通算では、計6362試合でア・リーグの3315勝3047敗(勝率5割2分1厘)。格差はほぼないとみられています。

メジャーのリーグ間にレベル差が少ない理由としては、完全ウェーバー制のドラフトや、活発なFA移籍、大胆なトレードなど、多くの要素が含まれていると言われています。その一方で、近年は目先の「来季」ではなく、3年後など中長期的な視点で再建策を進めるチームも目立ちます。特に、資金力に余裕のない球団は、スカウティングや育成、トレーニングなどに主眼を置き、低予算でも頂点を狙えるチームを作るために知恵を絞っています。15年に世界一に輝いたロイヤルズや、今季ア・リーグを制したレイズなどは、その好例でしょう。

今後、NPBではセ・リーグのDH採用案が議論されるのかもしれません。ただ、メジャーの成功例を見る限り、試合を動かす戦術だけでなく、ファームや編成、コンディショニング部門など組織全体が同じ戦略を共有し、同じ方向を向かない限り、実力を蓄えることは簡単ではないような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)