ツインズ前田健太投手が、今季の開幕投手に指名されました。エースとして活躍した広島時代は、2010年からの6年間で、開幕前のWBCに出場した13年を除く5年間で開幕投手を務めましたが、メジャーでは6年目で初の大役。「メジャーリーグに来て、まさか自分が開幕の日に先発マウンドに上がる日が来るとは思ってもいなかったです」。日頃から常に謙虚な姿勢を崩さない前田ですが、紛れもない本音に聞こえました。
過去、日本人メジャーで開幕投手を務めたのは、野茂英雄、松坂大輔、黒田博樹、田中将大、ダルビッシュ有の5人で、前田は6人目。メジャーでも日本と同じように開幕投手は、各チームにとってそのシーズンの大黒柱であり、「選ばれし者」との感覚はあるだけに、前田が格別の思いを持っていることは間違いないはずです。
昨季、ア・リーグのサイ・ヤング賞争いで次点となった前田が、開幕投手となることに異論はないでしょう。ただ、19年までプレーしたドジャースに今も在籍していたとすれば、状況は違っていたのかもしれません。というのも、前田がメジャー入りして以降、ドジャースには、左腕クレイトン・カーショーという絶対的なエースが、チームの顔として存在していました。しかも、ドジャースとは複雑な出来高払いの契約内容もあり、シーズン後半になると救援に配置転換されるなど、前田にすれば納得のいく起用法ではありませんでした。
ところが、昨年のキャンプイン直前、ツインズへトレードで電撃移籍した際、前田は周囲の視線の違いに苦笑していました。
「何か、僕がベテランみたいな扱いなんですよね。何でも好きにしていいよ、みたいな…」。
全国区で人気度の高いドジャースでプレーし、ワールドシリーズなどでも快投を演じた前田は、実績のあるスター選手として迎えられました。しかも、昨季は公式戦で6勝1敗、防御率2・70、全11試合で5回以上を投げて3失点以下。投手部門では、ほぼチーム随一の成績を残したことで、「エース」として認識されました。
ヤクルトなどで監督を務め、多くの明言を残した故野村克也氏は、ことあるたびに「地位は人を作る」と話していました。スポーツ界、一般社会を問わず、待遇のいい高い役職にあぐらをかいて慢心する人もいますが、その反対に、自らの立場に責任を感じ、より精進する人もいます。
キャンプインした直後、前田は真剣な表情で話していました。
「チームの中心になってやっていけるようにしたいと、米国へ来て初めて思いました。ドジャースの時は、自分が中心だと思える成績は残せなかったですからね。引っ張っていくというより、何とか中心になってチームの優勝に貢献したいですね」。
開幕投手=エース。
迎える今季。信頼されることを意気に感じる前田の背番号「18」が、より際立って大きく見えるような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)




