8月1日のトレード期限を過ぎ、今オフFAとなるエンゼルス大谷翔平投手が残留したことで、米球界では、早くも来季の移籍先に関する話題が飛び交っています。移籍期限前、水面下で動いていたドジャースやヤンキースなど、資金力のある有名球団の名前が挙げられていますが、大谷の場合、日本人特有の美意識や感性もあり、単純に金銭面だけでは計れないとも見られています。

2000年オフ、マリナーズからFAとなったアレックス・ロドリゲスが、10年総額2億5200万ドル(現レートで約365億円)でレンジャーズ入りした際、バブル景気の余韻もあり、当時最高額の金銭面ばかりが注目されました。その一方で、ロドリゲスは将来的に「勝てるチーム」を優先し、若手を育成する「ファームシステム」の充実度を重視した結果、レンジャーズへの移籍を決断したことを強調しました。たとえ高額の長期契約を交わしても、万年最下位でポストシーズンに届かないチームに所属したとしても、野球選手としては本意ではないはずです。ロドリゲスの選択が影響したか否かは不明ですが、その後、米球界が「ファームシステム」や「トッププロスペクト(期待の若手選手)」をランキングするなど、下部組織を重要視し始めたのも、ちょうどその頃からだったような気がします。

裏を返せば、目先の勝利だけでなく、中長期的な戦略に基づいたスカウティングや育成システムがない限り、世界一はもとより、ポストシーズンには届かないとも言えます。今季、ア・リーグ東地区首位を走るオリオールズのように、ドラフトで指名した有望選手を着実に育成して強豪球団に再建したのは、かなり稀なケースかもしれません。その一方で、優勝争いに加わったチームが、トレード期限前に大物選手を獲得しようとしても、交換要員として他球団が欲しがるような「トッププロスペクト」がいない限り、十分な補強もままなりません。

ちなみに、今年7月のドラフト後、米メディア「MLBパイプライン」が発表した「育成システムランク」によると、主な順位は以下のようになっています。

(1)オリオールズ

(2)パイレーツ

(3)ブルワーズ

(4)カブス

(5)レッズ

(6)ドジャース

(9)パドレス

(10)レンジャーズ

(11)メッツ

(14)ジャイアンツ

(19)マリナーズ

(21)ヤンキース

(28)エンゼルス

ランキングはあくまでも目安に過ぎませんが、「将来性」という点では、一定の指針になるとも見られています。ただ、「勝てるチーム」を見極めることは簡単ではありません。最低でも総額5億ドル(約725億円)とも見込まれる大谷は、何を最優先し、どこに判断基準を置いて、最終決断を下すのでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

新人王候補のオリオールズ・ヘンダーソン(USA TODAY)
新人王候補のオリオールズ・ヘンダーソン(USA TODAY)