今季の日本人大リーガーで注目度の点では、エンゼルス大谷翔平投手(27)と双璧を成す存在でしょう。カブスに入団したルーキー鈴木誠也外野手(27)です。

ともに1994年生まれで、誕生日は44日違いだけの同学年。エンゼルスはア・リーグ西地区、カブスはナ・リーグ中地区とリーグが異なります。残念ながら今季はインターリーグ(交流戦)で対戦はなく、公式戦で2人の対決はありません。そんな中、両チームで思い出すのが本拠地球場の名称です。米国有数の大都市シカゴにあるカブスの本拠地はリグリーフィールド。一方、エンゼルスも創設時は「リグリーフィールド」を本拠地にしました。

とはいっても、カブスの本拠地球場を共用したわけではありません。同名の球場がロサンゼルス市内にもありました。エンゼルスは当時、カブスのマイナー下部組織。その本拠地球場の名称もリグリーフィールドでした。1961年のア・リーグ加盟後も初年度だけ、同球場を使用しました。

「本家」リグリーフィールドは国定歴史建造物にも指定されるほど由緒ある球場です。現存する大リーグ最古の球場フェンウェイパーク(レッドソックス本拠地)が完成した2年後、1914年開場という2番目に古い歴史を誇ります。今年で109年目、外野フェンスがツタに覆われていることが特徴です。昔の球場と変わらぬ情景と風格を感じさせます。「全米で最も美しいボールパーク」とも称されます。

また、昔ながらの球場らしく左中間、右中間の膨らみがありません。つまり、ホームランが出やすいです。外野スタンドを越える場外アーチもよく見られます。また、季節風が強いことで、シカゴの別名は「ウィンディーシティ(風の街)」。風向きによっては1発が乱れ飛ぶこともあります。そういう意味では、パワーヒッター鈴木にとって有利な球場ともいえます。

一方、かつては照明設備がなく、全てデーゲームで行われました。88年からナイターも始まりましたが、今も変わらずデーゲームが多い。そのため、選手は他球団より暑さで体力を消耗しやすいです。例年、初夏を迎える頃には“June Swoon(6月の気絶)”との言葉で象徴されるように、失速が目立ちました。

それが1908年のワールドシリーズ連覇から、100年以上も世界一から見放された原因ともいわれました。1908年以降は7度のワールドシリーズ進出もことごとく敗退。1945年を最後にリーグ優勝もなく、いつしか「ヤギの呪い」という呪縛にも泣かされました。ようやく2016年に、現在はエンゼルスを指揮するジョー・マドン監督の采配も光り、108年ぶりに世界一奪還を果たしました。

ただ、選手が夏場以降に成績を落とす傾向は今も悩みの種です。2008年から3年半在籍した福留孝介外野手(44=現中日)も、例外ではありませんでした。開幕は好スタートも、6月ごろから成績を落とすシーズンの連続。契約最終4年目の7月にはインディアンスへトレードされました。

また、鈴木が慣れ親しんだ右翼は特に、タフさが求められます。リグリーフィールドでは西日が当たるため、一番体力が消耗されるポジションだと言われます。しかし、鈴木もそんなことは十分承知の上でしょう。今季予定では、ホーム81試合中で46試合がデーゲーム。その多さから、活躍して人気を集めると、カブスの選手は今も昔も「マチネー(演劇などの昼公演)アイドル」と呼ばれたりします。日本人初の右の長距離砲として、5年8500万ドル(約102億円)の大型契約が期待度の高さを物語ります。

ちなみに日本人右打者のシーズン最高成績は、本塁打は城島健司捕手(マリナーズ)と井口資仁内野手(ホワイトソックス)の18本(ともに06年)。打点は城島の76打点(06年)です。そして、ワールドシリーズという世界最高の舞台で、大谷との真っ向勝負を待ち望んでいます。(大リーグ研究家・福島良一)