執念の2安打-。マリナーズのイチロー外野手(44)が、レンジャーズ戦に「6番右翼」で5試合ぶりにスタメン出場し、3打数2安打2四球と、今季3度目のマルチ安打をマークした。この日から外野手枠が「4」と1枠減るなど、ベンチ入りメンバー25人枠の生き残りをかけた戦いが本格化。今後の10日間が正念場となる。

 表情はクールでも、イチローは熱い思いを胸に一塁を駆け抜けた。2回表無死一、二塁。4秒以内で俊足といわれる一塁到達タイムは3秒86。キャンプ中に痛めた右ふくらはぎが完治しただけでなく、結果へのこだわりがイチローを加速させた。この日は最高気温20度の晴天。「今まで寒いところでしかやっていないので、それは上がるしかないと思いますけどね」。4回の第2打席は遊撃のグラブをはじく安打を放ち、さらに2四球。5打席で4回出塁し、存在感を見せた。

 自らの置かれた状況は十分に心得ていた。昨季までの正左翼手ギャメルが18日(同19日)に復帰して以降、ベンチスタートの日々が続いた。その間の4試合で出場機会は代打の1打席だけ。「体力を維持できればという感覚。そこにフォーカスしていましたけどね」。試合前にランニング量を増やすなど出番に備える姿勢は不変だった。

 多くの地元メディアはイチローが近くベンチ入りメンバーの25人枠から外れると予想していた。だが、先発登板したラミレスの復帰に伴い、左腕キラーの外野手ヘレディアがマイナーに降格。外野手枠は5人から4人に変更になった。サービス監督は、ヘレディアの降格理由について、23日(同24日)からの7連戦で先発右腕との対戦が続くことを挙げる一方、「彼はすぐに戻って来る」と説明。イチローとギャメルで左翼を争う実情があらためて浮き彫りになった。

 ヘレディアの再昇格は最短で5月2日(同3日)。イチローはそれまでの10日間で結果を残さない限り、残りシーズンをメジャーでプレーできる保証もない。地元メディアの雑音を封じることはない。今季初の右翼での出場に「ライトからの景色はやっぱりいいね」と振り返った。もっとも、争う位置は左翼。たとえ景色が違っても、グラウンドに立つために死力を尽くす覚悟は変わらない。【四竈衛】