【アナハイム(米カリフォルニア州)4日(日本時間5日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が、異例のシーズンへの決意を語った。キャンプ再開2日目の練習後、オンライン会議システム「Zoom」で取材対応。3月11日以来となる肉声で、自粛期間中の生活を明かした。米国時間の今日5日は自身の26歳の誕生日。7月下旬に開幕するメジャー3年目のシーズンへ、投打で全開で臨む覚悟を示した。

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また1つ年を重ね、精悍(せいかん)な雰囲気がより一層、漂っていた。オンラインの画面上に現れた大谷は質問にうなずきながら、冷静に言葉を並べた。声のトーンは抑えめだが、固い決意が表れていた。

「チームに貢献できないというところで、もどかしさがあった。しっかり100の状態で貢献したいと思ってますし、60試合なので、最初から最後まで飛ばしていきたい」

一昨年10月に右肘を手術し、打者専念の昨年もチームを優勝に導けなかった。今年は、キャンプから二刀流で順調にスタートを切った。だが、新型コロナウイルスが猛威を振るった。カリフォルニア州では3月19日から外出禁止。大谷は自粛期間中、「家にいるときは、自分でご飯を食べないといけない」と自炊に励み、「余った時間は暇なので、本読んだり、ゲームしたり、寝たり。けっこう寝てたかもしれない」と、笑って明かした。野球がしたくても、できない。それでも「いらいらはなかった」。

感情を抑え、開幕を信じて待った。3月中旬にチーム離散後も、右肘の治療のため本拠地エンゼルスタジアムでの調整を許可され、「フィジカルだけは落とさないように」と、トレーニングを欠かさなかった。「オフ期間の中盤から終盤みたいな感じの調整の仕方をもう1回やりました」。春にシーズンを戦っていないという異常な状態を冬の自主トレ期間と捉え、完全復活への肥やしとした。

5月に入り、開幕へ向けてMLBと選手会の労使交渉が始まった。具体的な話が進むにつれ、大谷の気持ちも動く。「個人的にはやっぱり、やりたいと思っていた」。その間、予定されていた5月中旬の復帰登板は静かに過ぎていった。だが、「投手としての調整期間をしっかり設けられたっていうのは、プラスかなと思う」と前向きに捉え、投手調整のギアを上げていった。「再開した時にしっかり頑張れるように、準備はしてきた」。自分のやってきたことに、胸を張った。

ただ、現状は厳しい環境が続く。家族の健康と安全を配慮し、シーズンを辞退する選手が続出。同僚のトラウトも妊娠中の妻を案じている。大谷は「何が正解かっていうのは、よく分かってはいないところではある。僕は1人で暮らしているので、そんなに私生活で不安はないですけど、家族がいる人は不安かなと思います」と胸中を明かした。 復帰登板も無観客の異様な状態で果たすことになる。「気持ちの面で、本当に公式戦の感覚でやれるのか不安はある」。それでも、「できることをまずやるしかない」と前に進む覚悟がある。大谷自身を含め、二刀流復活を待つ全ての人へ。「飛ばせるだけ飛ばして、両方しっかり頑張りたい」。100%全力で-。26歳の特別な1年が始まる。