日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

  ◇    ◇    ◇

メジャーリーグが23日(日本時間24日)開幕に踏み切る。新型コロナウイルスの感染拡大で60試合(通常162試合)、同地区対戦に限定されるなど、特別なシーズンとなる。

トロント・ブルージェイズで14年から3シーズンにわたって、日本人初のチアリーダーを務めた鵜飼優衣と話したのは、数日前のことだった。

彼女は米国とカナダの国境が封鎖されている状況を踏まえ、「政府が米国からチームを特別措置で受け入れるかどうか、ざわついている」と語っていたが、このほど方向性が示された。

カナダ政府がブルージェイズの試合許可申請を認めなかったのだ。そのためブルージェイズの本拠トロントでの試合は見送られ、米国内で行う運びになった。

今季は巨人から山口が加入。鵜飼は「もともと無観客の予定でしたが、それでも地元ファンはホームで試合ができないのを残念がっています」という。

鵜飼はヨーク大在学中の14年、約300人が応募したチアリーダーのオーディションを受け、定員20人に入って合格。チーム名「J・FORCE」の一員として盛り立てた。

「毎試合イニングごとに応援と球団スポンサーのプロモーションをします。スタンド、グラウンド、ダグアウト上を走り回りました。大切なのはファンの方と一緒に楽しむことです」

14年はヤンキース田中がブルージェイズ戦でメジャーデビューして初勝利。15年はチームが22年ぶりの地区優勝を果たすなど“勝利の女神”だった。

日本人メジャーで鵜飼の存在を知らないものはいない。川崎とはチームメートだったし、イチロー、上原ら数々の大リーガーを目の当たりにしてきた。

「1人で練習をするイチローさんの姿からは集中力を高めているオーラを感じました。ダルビッシュさんも存在感が強かったです」

今季は「J・FORCE」も活動休止。トロントは外食禁止など「フェーズ2」の段階で、新型コロナウイルス感染防止に神経をとがらせているという。

「早く日常が戻って(本拠)ロジャーズ・センターで試合が見たいですね」

まさに「わたしをメジャーに連れてって」の気分だろう。本場メジャーがいかに新型コロナウイルス感染と戦っていくのか。世界スポーツ界の視線が集まっている。  (敬称略)

◆鵜飼優衣(うがい・ゆい) 1989年(平元)3月11日、広島県生まれ。31歳。宝塚北高、神戸女学院大を経て、カナダ・トロントのヨーク大に留学。ブルージェイズでチアリーダーとして球団プロモーション・宣伝部に所属。退団後、ダンスカンパニー「Ballet Creole」に就職。カナダ国内外で舞踊家、振り付師、教師として働く一方、日米加合同Netflix映画作品に女優として出演。9月からヨーク大大学院に進学。