大リーグは今日21日(日本時間22日)から、投手に不正使用が疑われる粘着物質の取り締まりを強化する。全体の打率が2割3分台と「投高打低」が顕著な今季のメジャー。一部投手が投球の回転数を上げるために不正使用している疑惑を受けたものだ。先発、救援とも徹底的にチェックされ、違反者の罰則適用も厳格化することで、「スパイダータック」など新物質の横行に歯止めをかけたい方針。一方、シェービングクリームなどは使用を黙認されていたところもあり、現場は大混乱となっている。

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日本より明らかにボールが滑るメジャーでは20年以上前から、各自の滑り止め対策が黙認されていたところがあった。誰もが戸惑った日本人投手だけでなく、ほぼ全投手が対策に腐心した。規制厳格化は、不正か否かの線引きがこれまで、曖昧だったことに起因すると言ってもいい。

大リーグ内の共通認識として、まず松やにはNGだ。ある往年のナ・リーグ名投手は打席ごとに、バットに付いた松やにを付けて戻り、次の回の投球が激変したほど効力は大きいとされる。同じく「スパイダータック」など、接着剤のように粘着性の高い物質は、滑り止めの範囲を超えている。スピン率や変化量を含め、球の動きに大きく影響するものとして「不正」と解釈された。

一方、一般生活で使用されるスキンケアなどの日常品は黙認されてきたところがある。保湿クリーム、ローション、ベビーオイルなど、生活習慣の中でありふれており、そもそも規制が難しい。多くの投手が、それらを季節や天候に合わせて「配合」。送球機会の多い野手も、保湿クリームなどを日常的に使用しており、問題視されることは少なかった。

今回の規制強化に関して、パドレスのダルビッシュは「どうしても度を超す人間が出てくる」と指摘。一方で、大リーグ機構の姿勢にも「球を替える方が先。(同機構が)急に立場を変えたと僕は感じます」と疑問を呈した。同機構は過去にも「飛ぶ球」を導入するなど、軸がブレやすい。現状のボールにメスを入れない限り、投手は制球を乱し、そして故障につながる可能性も、極めて高い。【MLB担当 四竈衛】

◆取り締まり手順 先発、救援投手ともイニングが始まる前に、異物の付着がないかチェックされる。また、イニングをまたいで複数回確認される。イニング中にも疑わしい行為があれば、その打者との対戦後に確認を受ける。打席中の確認はしない。登板前の確認事項としてはグラブ、帽子、ベルト。怪しいと思えば、ユニホームも確認対象となる。違反者には退場処分と、10試合の出場停止処分が科される。