冷静で謙虚なイメージも強いが、エンゼルス大谷翔平投手(28)の言葉には時に勇ましさが宿る。時間はかかっても、有言実行で必ず目標を達成する。2年目の2019年4月末、日本で新しい年号となる令和を迎える前に高らかに宣言した。

「野球人生を語るにはまだまだ序章。その前段階として、平成があったのかなと。新しい元号になって、これからが本番。しっかり自分の力をもっともっと高くもっていけるように、そういう年に毎年したい」

最初の3年間は苦難の連続。だが、言葉通りに年々、投打で完成度を高めた。日本ハム時代から二刀流選手として10年目。打者や投手に専念した年、リハビリに多くの時間と費やした年、どんなシーズンであっても、世界最高の野球選手になる夢を諦めなかった。ルースの孫、トム・スティーブンスさん(69)が語ったように、唯一無二の道を歩み続けた継続力こそが、大谷のすごみだ。

ベテラン選手のルーティンを参考にしつつ、調整はほぼオリジナル。過去のサンプルもない。試合への準備の仕方も、失敗と成功を繰り返して築き上げてきた。例えば、元同僚で大谷の調整法をリスペクトしてきたフィリーズのマーシュは「ほとんどの選手は当日に(相手投手の)映像を見て準備するが、彼は前日の試合が終わってからすぐに準備が始まっている」と証言。一足早い準備が、他選手との差をつけている。

投手のルーティンは臨機応変。登板間のブルペン入り時期も柔軟に変える。時にはグラウンドで、15分程度で投球練習を終えることもある。同僚のサンドバルは「正直、ルーティンをあまり見たことがない。僕らが外で練習している時、彼は何か他に準備していることがあるし、僕らが練習を終えれば、彼は外で投球練習をしている」と明かし、チームメートですら大谷の日々の調整法は謎だ。

過去に二刀流に挑戦し、断念した選手らは最も難しい面として「タイムマネジメント」を挙げる。完全なる二刀流ロードはもはや、大谷にしか分からない。打者ではメジャー1年目から18本塁打で2桁をクリア。だが、投手では2桁到達まで5年かかった。最大限にパフォーマンスを発揮するための道を模索してきた毎日。長期的な視野で目標と向き合える継続力が、歴史的偉業につながった。【MLB担当 斎藤庸裕】