エンゼルス大谷翔平投手(28)とアスレチックス藤浪晋太郎投手(28)が1日(日本時間2日)に、いよいよメジャーの舞台で対戦する。開幕投手を務めた大谷は2戦目はDHで出場する見込みで、藤浪は先発でメジャーデビューを果たす。

プロでの打者大谷VS投手藤浪は、13年5月26日の交流戦(甲子園)の1度だけ。3打数2安打で二塁打2本と大谷が打ったが、試合自体は7回1失点で藤浪が勝ち投手となった。

今回は実現しないが、プロでの投げ合いは14年のオープン戦とオールスターである。3月8日、オープン戦では2人とも先発で5回を投げ、大谷が勝利投手、藤浪は敗戦投手。オールスターでは、大谷が勝利投手、藤浪が敗戦投手となった。公式戦での投げ合いはない。当時の紙面原稿を復刻版としてお届けします。

   ◇   ◇   ◇

球界の名勝負になっていくであろうライバル対決が、野球人の聖地・甲子園で幕を開けた。日本ハム大谷翔平投手(18)が26日、阪神2回戦で、ドラフト同期の藤浪晋太郎投手(19)と、プロ入り初対戦した。注目の超大型ルーキー対決は、4回に左前へ二塁打、6回にも右中間を破る二塁打を放ち、3打数2安打と個人的には大谷に軍配。だがチームは1-7で敗れ、連敗となった。

 

チームの勝敗とは次元の違う興奮が、そこにはあった。2人の若者の真剣勝負に、4万6000人を超えるファンが魅了された。大谷は、ライバルが自信を持って投じてくるストレートに、狙いを絞り、打った。2本の二塁打で3打数2安打。「18歳の同じ学年で、そういう意味では楽しみでした。今日は直球を打ったけど、次は変化球でくると思う。そのときにも打てるようにしたい」。余韻に浸ることなく、すぐに次回対戦を見据えた。

一貫して直球待ちの姿勢を貫いた。4回、2ボールから、外角への146キロ直球を左前へ運んだ。「とらえたつもりだったけど、シュートして先っぽに当たった」。会心の当たりではなかったが、それを逆手に取った。スピンがかかったボールが左翼マートンの前を転がる間に、一塁を回って二塁へ。単打コースへ飛んだ打球を二塁打にした。「流れが悪かったので」。5点のリードを許す展開。ムードを変えるため、果敢に狙った。

6回には右中間へ“正真正銘”の二塁打を放ったが、チームは大敗を喫した。本塁打を放ちながら敗れた、昨春のセンバツと同じ屈辱だった。「個人的には2本打ったけど、勝たないと意味がない」。栗山監督も「もうちょっと緊張した形で勝負させてあげたかった」と悔しがった。

大谷が藤浪を最初に意識したのは、高校1年のとき。「2年後のドラフトで6~8球団くらいの指名を受ける。それが目標」。当時のチームメートに宣言した。そして、加えた。「そのために、藤浪に勝たないと」。すでに高校球界で有名になりつつあった超高校級右腕を、名指しでライバルに挙げた。

自分のモチベーションを高めるため、藤浪が掲載されている雑誌を切り抜いたこともある。「ファイルに入れて持ち歩いている」といううわさまで流れたが「そこまではしてなかったですよ」と苦笑い。だが、寮の自室に貼っていたのは事実だった。

グラウンド上ではライバルでも、ドラフト同期生のよき仲間でもある。球団関係者との会話で、7月に行われる球宴の話になると「藤浪は出ますよね」。この日4勝目を挙げた同期生の活躍は、逐一チェックしている。お互いプロに入った今でも、自身の発奮材料になっている。

今後も続いていくであろう2人の名勝負。今回は大谷が23日のプロ初登板から“中2日”で野手として対決したが、投手として投げ合いの可能性だってある。「(投打)どちらでも、勝つことが大事」。そのたびに、球界の歴史に新たな1ページが刻まれていく。【本間翼】

▼日本ハム大谷が5番でスタメン出場した。高卒新人がクリーンアップトリオに入ったのは、10年筒香(横浜)が5番で3試合に出て以来。日本ハムでは東映時代の59年張本(3番3試合、4番78試合、5番7試合)以来、球団54年ぶり。

▼高卒新人同士の投打対戦は昨年の武田(ソフトバンク)対永江(西武)、武田対近藤(日本ハム)、釜田(楽天)対永江以来。大谷と藤浪のように甲子園で対戦した選手同士が翌年プロで対戦したケースは、工藤(名古屋電気→西武)と金村(報徳学園→近鉄)が81年夏の甲子園準決勝で当たり、プロ1年目の82年9月15日の5回に1打席(空振り三振)対戦して以来31年ぶり。

▼大谷は今季17試合目の出場だが、出場した試合のチーム成績は2勝14敗1分けと、勝利に結びつかない。4月9日楽天戦から1分けを挟んで出場10連敗になった。

◆大谷対藤浪VTR 昨年センバツ初日に対戦。花巻東の4番大谷は2回、大阪桐蔭・藤浪から右翼へ先制本塁打。両者の対戦成績は3打数1安打1打点(右本、四球、三直、遊飛)。試合は大阪桐蔭が9-2で勝ち、投球内容は藤浪が9回完投、12奪三振。大谷は8回2/3まで173球を投げ、11奪三振、9失点(自責点5)。

(2013年5月27日付 日刊スポーツ紙面から)※敬称、記録やデータなどは当時のものです