エンゼルス大谷翔平投手(29)が19日(日本時間20日)に2度目の右肘手術を受けた。前回18年10月の手術で移植した腱(けん)の修復と同時に、新たに自分の別の腱を移植し、そこに人工靭帯(じんたい)で補強するハイブリッド手術を行ったとみられる。人工靭帯は「インターナルブレース」という手法で、重ねるように用いられる。トミー・ジョン手術(自らの他部位から腱を移植する内側側副靱帯の再建術)の第一人者、慶友整形外科病院(群馬・館林市)の古島弘三副院長に実情を聞いた。
米国ではトミー・ジョン手術に代わる「新手法」としてインターナルブレースが注目されている。両者を合わせたハイブリッド手術も同様だ。だが、日本では症例が少ない。そもそもトミー・ジョン手術自体が少ない上、古島氏によれば「否定的な意見もある」という。その理由は、この数年前から始まった手法に、まだ長期的なデータが不足しており、副作用の全容がわからないからだ。
人工靭帯の素材は、コラーゲンを含む繊維だ。それは丈夫ではあるが、生体内で硬い人工物が長期間安定して維持されるかどうかは不明だ。「数年後に骨に何らかの作用が起こることがあるかもしれない」と古島氏は述べる。
かつて、膝の靭帯手術に人工靭帯が使われていたが「靭帯が強すぎて、骨が摩耗してしまう例や滑膜炎が生じるなどが増え、最近では使用が減少している」とのことだ。
米国では近年、NFLの選手がアキレス腱の手術に使用し、短期間での復帰が話題となった。MLBでも、復帰期間を短縮できるメリットから、使用例が徐々に増えてきている。また、トミー・ジョン手術と比較して、より簡易な技術で手術が可能であるとされている。短期間での大きな収益を追求するプロスポーツの世界では、長期的な健康リスクが軽視される傾向もある。しかし、アマチュアの選手にとっては、無条件で推奨されるものではないようだ。【斎藤直樹】