ドジャース山本由伸の投球フォームといえば、足を上げずに投げる独特な投球フォームを思い浮かべるだろう。簡単に説明するなら「極端に無駄を省いたフォーム」という表現になる。確かに投手には足を上げてから、そのまま真下に下ろし、そこから投げる方向に対してスライドさせるように踏み込む投手がいる。足を上げないからといって「理にかなってない」というわけではない。そこで今回は、私なりに山本の独特な投球フォームを解説したいと思う。
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投球スタイルの基本は、ノーワインドアップ。(1)で振りかぶらず、(2)から(3)で左足を少しだけ上げ、体をひねるようにして投げる方向に半身の体勢をつくっている。ここまでは普通のノーワインドアップで投げる投手と変わったところはない。
足を上げないという表現になるのは、(4)から(5)になるまでの動作。普通なら(4)で左足のヒザの部分が、低い投手でもベルトのラインぐらいまで上がる。しかし山本はこの位置がMAXの高さ。この高さのまま、(5)のような体重移動に入る。
ただ、大事なのは(4)でも(5)でも、股の間の股関節を締めているところ。この部分ができていれば、足を上げるとか上げないとかは、それほど関係ない。言葉で解説すると、ノーワインドアップだが、下半身はクイックで投げているということ。それほど特殊な投げ方をしているわけではない。
むしろ、(5)以降の下半身の体重移動は素晴らしい。(6)では全身の力を抜いて脱力するように沈んでいる。(7)のお尻の下に椅子があれば、スッと座れるような感じの形ができている。もうひとつ注目してほしいのは、(7)の両足の角度。両足の付け根の部分から両ヒザまでの間に「ハ」の文字ができ、両ヒザの下からスパイクまでの間で、もうひとつ「ハ」の文字ができている。両ヒザをうまく絞りながら、体重移動しているから、2つの「ハ」の文字を作ることができる。
上半身の使い方も極めてシンプル。(5)から両腕を割るようにして開いていくが、(7)まで両腕が対称するように同じ動き方をしている。両腕を左右対称に同じように動かすと、正確に動かしやすく、ブレが少なくなる。つまり再現性を高くして、両腕を動かしていくことができる。
(8)を見ても両腕のヒジを起点に、グラブは下がり、ボールを持つ手が上がっているだけ。上下の違いはあるが、左右対称という点は変わっていない。(9)での胸の張りと、背筋のしなり具合は抜群。(10)でも軸足から体幹までが一直線になっている。力がロスしていない。
そして(10)から(12)までの右腕を振る軌道に注目してほしい。捕手側から撮影した角度でないため少し分かりづらいが、リリースする(10)から(11)にかけて投げる方向へ真っすぐに腕を振っている。これが左側に引っかくような軌道になったり、右側にすっぽ抜けるような軌道になると、コントロールが悪くなる。投げる方向に真っすぐに腕を振れるところが、山本のコントロールの良さにつながっている。
残念なのは(12)以降のひとコマが見られなかったこと。フィニッシュで軸足に体重が乗り、左足1本で立っているように投げられているなら完璧。私の晩年は(11)のとき、左太ももの裏側で勢いを受け止めてしまうと、肉離れにつながってしまうようになった。山本のように左足で全身のパワーを受け止めるように投げられなくなってしまっていた。山本はパワフルなフォームで投げられている。
今後の気になる点を挙げるなら、日米のバッターの違いがどう出るかだろう。これは日本の打者に聞いた話だが、メジャーのバッターはタイミングの取り方が日本のバッターとは違う。日本のバッターは投手の足の動きに合わせてタイミングを取るが、メジャーのバッターはリリースの瞬間だけにタイミングを合わせている。そのため、山本のように足を上げないで投げるフォームに対し、戸惑いを感じないかもしれない。
今は山本の調子がよければ抑えるし、悪ければ失点しているという状態。自分の能力を発揮し続ければ、間違いなく抑え続けることができる。それでも疲れがたまったり、どこか痛いところが出て本調子が出せず、厳しくなる可能性がある。そこら辺が今後、どうなっていくのか注目していきたい。【上原浩治 日刊スポーツ評論家】



