大リーグが誤審抑制に大きく動きだした。30球団の代表者による会議が15日、ニューヨーク州のクーパーズタウンで行われ、バド・セリグ・コミッショナー(79)が、現在は本塁打に限定されているビデオ判定の適用範囲を来季から拡大する方針を明らかにした。監督には試合開始から6回までに1度、7回から試合終了までに2度、判定に異議を申し立てる権利が与えられる。11月に行われる各球団のオーナーによる投票(75%以上の賛成で可決)と、選手会及び世界審判協会の合意によって正式に決定する運びとなった。

 セリグ・コミッショナーが30球団代表者会議後の会見で胸を張った。「会議の中で支持と興奮を感じた。歴史的なことだ」。現在は本塁打に限定されているビデオ判定の適用範囲を、来季から拡大する方針を示した。11月に行われる各球団のオーナーによる投票で75%の賛成と、選手会及び世界審判協会の合意によって正式に決定する。

 新たに採用されるのはNFLで「チャレンジ」と呼ばれる方式を参考にしたものだ。監督には試合開始から6回までに1度、7回から試合終了までに2度、判定に異議を申し立て、ビデオ判定を要求できる権利が与えられる。ストライク、ボールの判定は適用外だが、対象となったプレーについては、ニューヨークで大リーグ機構の担当者が映像を確認し、最終的な判定を下す。認められた場合は、監督のアピール回数にはカウントされない制度だ。

 08年には米国4大スポーツで最後となる本塁打に限定したビデオ判定制度が導入された。だがそれ以外も判定によるトラブルは、日本と比べけた違いに多い現実がある。これまでは「ベースボール」の昔と変わらない魅力を重んじ、審判の威厳とプライドを保持するため、ビデオ判定による適用範囲の拡大を敬遠してきた経緯がある。だが事態の深刻化もあり、ヤンキースやドジャースなどで監督を務めたジョー・トーリ氏、アスレチックスやカージナルスなどで監督を務めたトニー・ラルーサ氏らをメンバーとする「リプレー委員会」を設置し、問題の検証がされてきた。

 同委員であるブレーブスのジョン・シャーホルツ球団社長は「ビデオ判定が導入できれば過去の誤審の89%がカバーできる」と主張。試合時間が長くなる懸念もあるが、同社長は「現在はリプレーに平均3分4秒かかる。将来的には1分15秒にしたい」と説明。判定がどこまで機械化されていくのか。日本球界への影響も大きいだけに、今後の議論が注目される。

 ◆NFLのチャレンジ

 審判の誤審を防ぐため86年から91年まで導入されたが、試合遅延が増え一時廃止に。システムを構築し直し、99年に再導入された。対戦チームの両監督は際どい判定に対して、ビデオでのリプレーチェックを審判に要求できる。誤審が認められなかった場合、チャレンジを要求したチームのタイムアウトの回数が1回減る。