<ワールドシリーズ:フィリーズ10-2レイズ>◇第4戦◇26日(日本時間27日)◇シチズンズバンクパーク

 【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)】フィリーズがレイズに10-2で快勝し、対戦成績を3勝1敗として、1980年以来28年ぶり2回目の世界一に王手をかけた。今季のナ・リーグ2冠王ライアン・ハワード一塁手(28)の2本塁打、5打点の活躍もあり、万全の継投で逃げ切った。

 ひと振りで試合を決められるのは、やはり主砲のバット以外になかった。2-1と1点差に迫られた4回裏1死一、二塁。4番ハワードが、カウント1-2からのカーブを下からたたき上げた。4万5903人の地元ファンを総立ちにさせる左翼席への3ラン。カーテンコールに応えた時点で、流れは完全にフィリーズに傾いた。8回表には右中間へ2ランを運んで5打点。「ワールドシリーズで2本の本塁打を打てるなんて、少年時代からの夢だからね」。身長193センチ、体重116キロの巨漢が浮かべた笑みは、まさに少年のようだった。

 頂点に王手をかけても、フィリーズにすれば、おぼつかない足取りだった。ハワードだけでなく、ロリンズ、アットリーと主軸の調子が上がらず、不安定な試合展開の連続だった。特に、公式戦48本塁打、146打点のハワードは、プレーオフ初戦から11試合連続ノーアーチ。決定力不足が苦戦の最大の要因だった。

 長い公式戦を終え、緊迫するプレーオフも佳境。疲れていない選手はいない。それでも、マニエル監督が打開策として選択したのは、日本式の特打だった。移動日となった24日。機構側が定める公式練習後、一塁側の室内ケージでは1時間半を超える居残り練習を行った。レイズの極端な守備シフトで安打ゾーンをふさがれてきたハワードは、引っ張りを捨て、中堅から左翼方向への打撃を徹底して繰り返した。「プレーオフは、個人のゴールや成績のためじゃない。チームのためのものなんだ」。前日の第3戦で初アーチ放つと、この日は左翼席へ1発。米国でも、練習はうそをつかなかった。

 戦前の「レイズ有利」の下馬評を覆し、世界一にあと1勝までこぎ着けた。今プレーオフは地元フィラデルフィアで6戦無敗で、しかも第5戦の先発は4戦全勝の左腕ハメルズ。それでも、マニエル監督は表情を変えずに言った。「この7カ月間、言い続けてきたのと同じ。明日も試合があるし、その試合に勝つためにプレーするだけだよ」。チャンピオンリングを手にするまで、赤鬼が笑うわけにはいかない。【四竈衛】