<ワールドシリーズ:フィリーズ4-7ヤンキース>◇第4戦◇1日(日本時間2日)◇シチズンズバンクパーク

 ヤンキースを「王手」に導いたのは、野球を知り尽くした36歳デーモンだった。4-4で迎えた9回、松井、ジーターが凡退し、簡単に2死。だが、デーモンはあきらめていなかった。フィリーズの抑えリッジにカウント2-1と追い込まれながらファウルで粘り続け、9球目を左前へはじき返した。

 デーモンの鋭い勝負勘は、そこからが真骨頂だった。続く打者は左の3番テシェイラ。ここでフ軍内野陣は極端に右へ寄る「テシェイラ・シフト」を敷いてきた。その2球目。クイックで投げないリッジのモーションを完全に盗んで、二塁へスタート。捕手ルイスはヒザを着いたまま、二塁ベースカバーに入った三塁手フェリスに送球したが、楽々セーフ。さらに、デーモンは一気にがら空きの三塁を陥れた(記録は盗塁2)。「特にテシェイラが打席の時、そういうことが起こることは、常に話してきたからね」。昨季まで在籍したジオンビ(現ロッキーズ)ら特別シフトを敷かれる状況への対応策は、想定できていた。

 というのも、2死でも三塁へ進む重要性をデーモンは意識していた。リッジの決め球スライダーは、いわゆる「縦スラ」。ワンバウンドすれば捕手が後逸することも多く、得点の可能性は広がる。逆に、相手バッテリーはスライダーが投げづらくなる。その結果、A・ロッドは速球を決勝打した。「まだ、オレの脚力も若いね。うまくはまってくれたよ」。おぜん立てを整えた陰の殊勲者デーモンは、してやったりの表情だった。【四竈衛】