ソフトバンクが今季初のサヨナラ負けを喫した。9回、2死一、二塁から中継ぎ右腕・森が陽岱鋼に右越えサヨナラ二塁打を許した。「打たれたカットボールは高かった。(9番の)中島で勝負したが、力が入って球が浮いてしまった」。長打の少ない中島で切り抜けるはずだったが、3ボールになりベンチから歩かせる指示が出た。「まだシーズンは長い。次もあるので」と、試合後気持ちを切り替えようと前を向いた。

 悲劇の数時間前、森は試合前に涙を流していた。練習開始前の投手ミーティング。サファテが突然、みんなの前に出て「急用ができて明日から1カ月、米国に帰ることになった」と神妙な顔つきで打ち明けた。田之上投手コーチが「聞いてないよ!」と困惑。ざわつく中、森は目を潤ませた。

 すべてサファテが考えたうそで、エープリルフールだと分かった瞬間、爆笑に包まれた。森は「だまされましたよ! (涙は)ちょっとね。1カ月もいなくなると優勝できなくなるから」と、苦笑いした。

 純粋なセットアッパーにとって、サファテはお手本でもあり大好きな兄貴でもある。サファテも森の似顔絵が描かれたTシャツを着るほど2人は仲良しだ。「名演技だったでしょ。(森)唯斗ウルウル」とサファテはしてやったりだったが、まさかのオチがつくとは…。

 2年連続50試合以上登板する森は、V3へ不可欠な存在。打線も泥臭く大谷を追い詰め、1度は同点に追いついた。工藤監督は「みんな粘って塁に出た。チャンスをつくるのが大事。最後は打たれたけれど、粘ってくれたのはよかった」。結束力はソフトバンクの何よりの強みだ。【石橋隆雄】