広島が総力戦で延長12回の死闘を制し、連敗を2で止めた。スタメン出場の堂林翔太内野手(24)が今季4打席目、なんと2年ぶりとなるアーチで先制。その後、シーソーゲームとなった接戦を、延長12回に4番・新井貴浩内野手(39)の決勝の適時打で勝ち越した。

 振り抜いたバットからはじかれた白球は、きれいな放物線を描いて左中間スタンドに消えた。今季4打席目に記録した初安打は、堂林らしい軌道を描いた。敵地に詰めかけた広島ファンからの大歓声を浴びながら、ゆっくりとダイヤモンドを1周した。

 「いいポイントで振り抜くことが出来ました。バットにいい感じで引っかかってくれました」

 2年ぶりの感触だった。2回2死走者なしからフルカウント。2球見せられていた内角球に体が反応した。直球144キロにバット一閃(いっせん)。広島打線はDeNA石田に前回、5回1/3を2安打に抑えられていた。この日も1回無死一塁から後が続かず。前回対戦時には2軍でもがいていた堂林が、ひと振りで嫌な空気を振り払った。さらに4回にも痛烈な右前打を見舞った。

 昨季はわずか出場33試合に終わった。大きな期待を背負っていただけに、球場内外で厳しいやじを耳にした。もがき苦しんだ日々を乗り越えての1発。待ってくれた人がいる。14年12月に結婚した元TBSアナウンサー絵理奈夫人との間に昨年9月に長男陽人君が誕生した。2軍でバットを振り込む日々も、愛息を抱く時間は最高の癒やしだった。愛犬の名とともに家族のイニシャルをバットケースに記し、常に一緒だと胸に刻んだ。夫となり、父となり初めて放ったメモリアルアーチだった。

 17日、4番ルナに代わって1軍に昇格した。チームの窮地に、救世主の期待がかかる。それでも「2軍でやってきたことを出せれば、おのずと結果は出ると思う」と胸を張る。家族に支えられてバットを振ってきた時間が、堂林を支えている。この日描いたアーチは、どん底からはい上がる懸け橋となる。